短編2[BL]

□潜む愛
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「ボーちゃんは、去年もらったチョコ、全部たべたの?」

「…全部、たべた。ネネちゃんからの…も、美味しかった」

「良かった。市販だったけど、今年もあげるから貰ってね?」


ボーちゃんもマサオ君もどこでどうなったのか高校生にもなると奇跡的に女の子から好意を向けられる対象になっていた

他校にいる風間君もそれなりに今年もチョコは貰っていそうだけれど、食べきれなくてもネネからのチョコはみんな受け取ってくれるだろう。

(たぶん、そこに友情はあっても、愛情なんてものは微塵も含ませていないからだわ)


「…ネネちゃん、今年もしんちゃんにだけあげないの?」

「マサオ君」

「しんちゃん…かわいそう。きっと、あげたら喜ぶと…おもう」

「ボーちゃん。だって、しんちゃん沢山もらってて、きっとネネのは邪魔になるもん」


毎年、しんちゃんにだけチョコを配らないネネに最初はしんちゃんも言葉にして文句を口にしていたけれど。

最近はどうでもよくなったのか、綺麗なおねいさんからもらう回数が増えたからかネネに催促することさえなくなってしまったのだ。

「そんなことないと思うけど。今更とかで恥ずかしいなら机にいれてみたらどう?」

「…机に?」

「机…だめ。毎年…そこは…先約がある、から」

「ああ、そっか。じゃあ、ネネちゃんも直接、渡すしかないね」

おにぎり坊主のくせに、意地悪な笑みを浮かべてネネをみるマサオだが本当に助けてほしいときは頼りになることも知っている。

そして残念な事に、二人が言う机のなかの先約とは、小学生の頃から今もバレンタインになると必ずしんちゃんの机のなかには差出人不明のチョコがある。

他の場所なら問題ないが、しんちゃんの机の中だけは、そのチョコしか入れてはいけない暗黙のルールまでできてしまっているほどだ。


「それにしても誰だろう。名前もないから手掛かりはないし」

「しんちゃんも…ずっと、気にしてる」


高校生になっても続くその差出人不明の手作りチョコに、マサオくんもボーちゃんも気になっているのだろう。

(相手が誰か、なんて一生わからないわ。だって、それはネネだもん。筆記でばれないように手紙も添えていないのだから)

毎年しんちゃんの為だけに作るチョコは愛情が含まれている。だからこそ直接は渡せないのだ。


「ネネ、しんちゃんにだけは…絶対にあげないって…決めたのよ」

「…ネネちゃん」

ぎゅうと拳を握ると、寒くて痛くてどうしょうもなかった。数秒遅れて自分の鼓動が悲鳴をあげたような気もする。

それでもマサオ君はしんちゃんにチョコをあげるべきだといつもより優しい口調でネネに問うけれど、彼は知らないのだ

好きな人に恋の相談をされることが、好きな相手を伝えられることがどれだけ屈辱てきで辛くて、悲しいことか。

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