宝物!

□BADEND
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BADEND

※未来設定
※HAPPYENDのパラレル(or分岐?)話となっております。



その部屋は誰が見てもきれいと思えるほど、きれいだった

壁には一つも染みがなく、木製のテーブルや椅子は鏡のように光って見える。テーブルクロスもひいてあるし、ソファのクッションだってそろえてある。その部屋は一般論から見ても確かにきれいだし、インテリアの配置がおしゃれと思える部屋だった。が、もっとこの部屋をきれいにしようとする男がいる。秋だった。秋は、これではだめだと言いはり部屋をもっときれいにしようとしていた。リビングにあるテーブルにかけるクロスを洗ったり、床を掃除機でかけた上に雑巾まで使って床をふいてきれいにする。
何より先ほどからきれいな部屋だと称しているのは、秋と平介の二人が住む部屋だったのだ。といっても秋は潔癖症ではない。朝ベッドシーツを整えずに出かけることもあるし、机をココアで汚してしまうこともあった。だが、今日ばかりは秋も普段よりきれいにしようとしているのは、今日の午後、二人の部屋に客人が来るからだった。秋にとっても、平介にとっても大切な人達が。

昔からその二人を知る平介は別に普段通りの部屋でいいじゃないかと秋に助言したが、秋はどうしても嫌だったらしく結局二人で掃除をし始めていた。秋がよほど彼らのことを大切にしているのがわかる。そんな秋を見て、先ほどよりも平介は少し自分の心が痛むのを感じた。今からくる客を、秋はとても楽しみにしていたのだが平介は二人に対して罪悪感を覚えており、あまり会いたくないな、というのが平介の正直言った気持ちだったのだ

「平介。テーブルクロスどこにおいたっけ?」
テーブルの上をふきんできれいにしながら、秋が言う

「そこの椅子に置いてあるよ」
そう言われて秋はリビングのすみっこに置いてあるソファを見る
ふとソファの上にある時計を見やる。時刻はもう12時を示そうとしていた

「どうしよう、もう来る時間!髪型これでいいかな?だめ?」

「大丈夫だよ。髪型どうこう言ってくるような二人じゃ、」


ピンポーン・・・


二人の住んでいる部屋を呼び出すインターホンの音がなった
呼び鈴が鳴ると秋は分かりやすいように体を硬直させる
平介も出そうとしていた言葉を飲み込み、インターホンのほうへ向かう。二人の立ち位置からして、秋が一番玄関の方に近いのだから秋が行けばよかったのかもしれない。だが、秋のあの状態では行くことは緊張しすぎていて無理そうだろう
平介は玄関の扉の前に立つ。そのとき、ああ、宅急便だったらいいのにな
そう思いながら、平介は玄関の扉を開ける
すると見知った顔が出てきた。懐かしい顔ぶれだ、宅急便じゃないのが残念だ

「あーきー!遊びに来たぞ!」

「久しぶりね。秋、平介、」

「・・・いら、っしゃい・・!」

「こんにちは。叔父さん、叔母さん」

玄関の外には秋の両親でもあり、俺にとってみれば叔母夫婦にあたる叔父さんと叔母さんが立っていた
今日は二人が、俺たちがすむアパートに遊びにくる日だった



BADEND



二人を迎えた秋と平介は二人をリビングの方へと案内した
二人はへーとかほーとか言いながら、部屋がすごくきれいとほめる。あっくんが二人が来るから掃除をしたいって言ったんですよ、といったら二人は愛しい目で秋を見た

「そっかー!なんだ、悪いことさせちゃったなぁ・・・。それにしても大きくなったなぁ、秋!もうお父さんより背が大きいじゃないか!」

「父さんも元気そうで・・・」

「くそう・・・・・格好いいこと言いやがって・・・成長したなあ・・・・ほーらおひげじょりじょりー!」

「だからそれ嫌だっておれ幼稚園生のころから言って、あああ、やめてよ父さん!」

「高校生にもなった息子に何をやっているか!」

そう言って叔母さんは自分が繰り出したチョップをおじさんの後頭部にたたきつける
たたきつけられた叔父さんはなみだ目になる
相変わらずだなぁ、そう笑いながら平介はリビングの扉を閉めた

「何飲む?コーヒーと紅茶でいい?」

「気が利くなぁ平介君!ありがとう」

「あら、ありがとう」

ああ、そんな感謝されるような人間じゃないのに、そう平介は思いながら、自虐的に笑った

その後、平介が淹れた紅茶やコーヒーを飲みながら、世間話が進む
世間話というが、ほとんどが秋の高校生生活についてが多かった。久しぶりに家族で会えたからか、叔父さんや叔母さんも最近の秋について気になるそうで、秋の話にどんどん食いついていく
また秋も、普段は人見知りな彼だが今日は久しぶりに両親と会えたからかよくしゃべる
そんな三人を見て、自分はもっと二人に対して罪悪感を感じた
自分が、あっくんと付き合っていることを二人が知ったらどう思うのだろうか

つい二週間ほど前のことだ。平介はあっくんに別れ話を持ちかけようとしていた。
が、結局平介は別れを告げることができなかった
あっくんは俺のことが好きらしい。多分、兄弟愛を勘違いしているのだろうけれど
そんなあっくんに対して別れを告げるのがどうしても平介にはできなかった。悲しむ表情を見たくはないというのも理由に含まれるし、別れるのが俺ら二人にとって一番いい方法だということをどうやって説明したらいいのか分からなかった、というのも理由に含まれるだろう。結局は、別れるという覚悟というものがたりなかったのだ。平介は。平介はそのまま別れを告げることもできないまま、だらだら時間が過ぎていき気付いたら二週間もたっていたのだ。そして前から計画していた、叔母さん夫婦がわざわざ有給をとって俺らがすむ地域へと遊びにきたいと申し出ていた日へときてしまったのだ。遊びに来てくれることはうれしいが、自分の精神的状況からか少し気まずいなぁ。と思うのが今の平介の心情だった

ふと、叔父さんは何かを思いついた顔をして、あっくんににやついた顔のまま話しかける

「そういえば、秋。彼女とかは作ったりしないのかぁ?」

「ぶっ」

「平介、汚いわよ紅茶噴出して」

「いや、あの、すみません」

噴出したものは自分のTシャツにかかっていた。汚い
まさかここでそういう話がくるとはなぁ、なんて答えよう。いないでいいか、ああでも俺が答えると変かな。そう思いつつ平介は秋を見やる
秋も、この手の話題にどう答えればいいのか分からず、平介をちらりと見る
二人はそのまま数秒ほど見合っていたが、不意に秋から話し始める

「・・・居るよ」

(うわぁ!言うのかよ!)
平介は内心焦る
秋だったら、言わないでくれるだろうと勝手に期待していたのが原因だが、

「えええええ?!い、いるの、?お父さんびっくり!」「うん。」

「そうなの?まぁ、もう高校生だものね」

「さっすがー!!俺の子供だな!」

「正直、このまま結婚できたらなぁと思う」

「えっ」

「え?!」

「ぶへっ」

また噴出した。そして軽く俺のTシャツにかかる。とてつもなく汚い
だが叔母さん夫婦は俺の様子は気にならないのか、そのままあっくんに質問する

「お・・・お前その人と結婚まで考えてるのか・・・」

「うん」

「・・・・・・その人とは、どのくらい付き合ってるの?」
不意に、叔母さんは紅茶を一口のみ秋にそうたずねた

「・・・・ちゃんと付き合い始めたのは、まだ半年ぐらい前だけど」

「まだまだね」

「だめ?」

「だめ、って言うわけじゃないけど。あんただっていつか結婚するんだし・・・ただ時期が早いだけよ」

「うん・・・まだ高校一年生だもんね、まだ早い・・・・っていうか平介君さっき吹き出してたけど大丈夫?」

「い、や・・・その、あっくんも言うようになったなぁと・・・」

「そうね・・・まさか秋がねぇ・・・・」

「・・・・ごめん、俺、ちょっと服着替えてくる。汚れちゃったし」

「いってらっしゃい」



ぱたん

扉を閉めたときの独特の音が、平介と秋が睡眠をとる部屋に響く
部屋の扉を閉め、そのままなだれこむようにベッドへと体を預ける
自分の顔を枕にうずめながら、平介は先ほど秋が言っていたことを思い出す。結婚したいだの、とかどーたらこーたら

(なんだよそれ・・・なに、あっくんはあんなこと言ってるんだ・・・、もし、もし、俺とあっくんの関係が叔父さんや叔母さんにばれたらどうするんだ、馬鹿馬鹿、)

「へいすけ、」

「あ、あっくん?」

「うん。平介、少し驚いてたから、・・・見に来た」

そう言って心配そうな顔を見て秋は平介を見やる。

「・・・・ねぇ、平介。ごめんね、?言っちゃって」

「・・・い、いやいいよ・・・。多分あれだけじゃ俺とあっくんが付き合ってるなんて向こうも知らないだろうし。・・・っていうかそもそも俺ら結婚なんてできないじゃない、男同士だし。・・・いや、外国には同姓結婚を認める国もあるけどさぁ・・・、そんなことより俺と結婚するなんて叔父さん叔母さんに言ったらもっと反対されるよ?」

そういわれて秋は少し黙り込む
不意に、平介のほうを見やる。笑う

「・・・・駆け落ちでも、しちゃおうか?」

「駆け落ちって・・・それでいいの?」
そう言って平介は呆けた顔で、秋を見やる
秋は少しだけつらそうな顔をしながら話を続けた

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