企画べや!

□秋平+虎太郎
2ページ/3ページ




でもそれが誰かを好きになる理由になるのかと言われたら迷う。迷う時点で俺も秋に感化されてるのかもしれないけど。

(でも、恋じゃないといい。いや恋じゃない)


だって、秋みてたら報われない恋がどれだけ苦しいか知っている。それならば自分を好きだって言ってくれる女の子の方が何倍も楽だ。

秋もそうしたらいいのに。俺みたいに可愛いなーって思う女の子と付き合ってさ、そうしたら苦しまなくていいのに。

(なぁ、あき。へいすけは女の子みたいにお前にラブレターだって書かないし、甘いものにしか興味がない男なんだぞ)

「なー、あき」

「なに?こたろー」


信号が青になるのを待っている間、秋は携帯を取り出すと多分へいすけにメールを送ってるんだろう。顔が幸せそうだ。

「あんなのの、どこがいいんだよ。ひょろいじゃん。優しくないし」

「へーすけ、優しい。おれ…へーすけがいい。おれ間違ってない」

「…分かってる。そんなこと…俺だって分かってる。ごめん、あき」

両手で顔全体を覆いながら首を両腕の間に埋めるようにしてその場に蹲まった。呼吸が止まる瞬間、信号は赤から青へ。

歩き出した秋に俺も歩幅を合わせて、小さく息を吸い込む。分かってはいるんだ俺だってさ。恋に罪はない。

秋がへいすけを好きなのは最初から特別だったからだ。でも一生、好きでいるつもりならば俺はそれを理解することはできない。しない。

きっと一生、好きでいるなんて言葉はへいすけには重い。ヘビー級だ。でもそんな爆弾を秋はもうずっと抱え込んでいる

「こたろー、こっち。近道ある。へーすけに教えてもらった」

「あ、この近くにケーキ屋ができたって、そーにぃが言ってたぞ」

「へーすけ喜ぶ。お、れ!買って帰る」

「しょーがねーな」

男二人。違和感もなくケーキを選ぶ、キラキラした秋の眼はどこかへいすけに似ていると思った

あれだ。ペットは飼い主に似るみたいな。いや秋はへいすけみたいにひょろくはないけどさ。

でも、秋。俺は秋の隣にはやっぱり可愛い女の子の方が似合うと思う。そんなこと言ったらお前すごい怒るけど。

「こたろー?」

「何でもない」

ケーキを選び終えた秋が満足そうに箱を両手で包みこむ。そんな慎重に持たなくても崩れたりしねぇのに。健気だ。

そんなお前の心遣いにもへいすけには届かないというのに。けど、安心しろよ。俺はもう覚悟してるんだからな。


「…あき、俺。あきとはずっと友達がいいからな。親友だからな」

「おれ、も。おれもこたろーと友達がいい。ずっと…親友、たのしい」


だからこそ、俺は秋。お前の最初で最後の恋を見守ることにする。一生、好きでいるつもりなら俺は一生お前の親友として傍にいる。


end.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ