企画べや!
□甘すぎた想い
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海藤(長谷)→平介
僕はあの人に出会ってから、泣いたり、怒ったり、嫉妬したり。心ばかり忙しい。
ふと、息をついた瞬間には誰よりもはやく考えるようになって、あの人の笑った顔を想像して、でも形にならなくて。
まだまだ気にくわない相手であるとしても、少しでも先輩が僕を見て微笑んでくれたらと願ってしまうのは悪いことなんだろうか。
「また、サボるつもりですか?もう授業がはじまりますよ」
「あー…やぁ、なかなかいい場所でね。先輩に教えてもらったんだよね」
「またですか」
少し校舎から離れた、ベンチと大きな木。身を潜めると誰にも見つからないだろう空間は、確かにこの人にとって居心地が良いのだろう。
空き部屋といい、この場所といい。友人にも先輩からも愛されている。けれどこの人にとってはそれがきっと重いと感じるんだろうか。
「…先輩のまわりはいいひとばっかり…先輩のなにがいいんだ」
「あからさまだなァ」
会話の最中、呼吸を一瞬止めた後、先輩の動作一つに心臓が五月蠅いくらいに泣いてばかりいる
何を言っても、怒らない。何を言っても、僕の声が届かない。傷つけたいわけではない。でも困らせたい。矛盾している、でも僕は。
「…先輩、何して」
「シャボン玉、じじせんせーに、もらってさ…そのままだったのを、ね」
「先輩でも、シャボン玉したりするんですか」
「あー、別に俺が好きというわけでは…好きそうだと、いや違うなら」
「…僕が好きだと思ったんですか?」
ふとこぼれる緊張の綻びのような顔が、とても綺麗だと思った。雑踏に紛れてしまえば気づくこともないだろう小さなものだったとしても。
ただ一瞬、先輩のそれをみた瞬間、シャボン玉がはじけた。パチンッと、頬にあたる少しだけ冷たい水滴と懐かしい匂いが僕を現実へと引き戻す
「………。授業…サボってしまった」
「まじめだなぁ。そんなにがんばらなくてもいいと思うんだけどなぁ」
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