短編2[BL]

□初夏の病
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「しんのすけは、ひまのお兄ちゃんでしょ?」

「そうだぞ」

「…だったら、ひまのお願い叶えてくれる?」

「我が儘なお姫様ですなァ、どんなことを叶えてほしいの」

「友達に帰ってもらって」

なんて我ながら自分でも、とんだ無茶ぶりだと思ったけれど口にしてからも後悔なんてしなかった。

しんのすけは何も言わず、階段を下りると居間で少し声がして、それからドアがしまる音がした。靴で散乱した玄関が綺麗になっている。


「しんのすけ?」

「しんのすけじゃなくて、お兄ちゃんでしょ。皆、帰ったぞ。これで満足でしょ?ひまわり」

「…怒ってる?」

「どうしてそう思うの?ひまが嫌な思いをするくらいなら、こんなこと何でもないぞ」

「でも、友達」

「こんなことで怒る友達なんて作った覚えないから安心していいぞ。ひまのお願いなら何でも叶えてあげる」

「…しんのすけが、お兄ちゃんだから?」

「そう。お兄ちゃんだから。ひまは、誰よりも大切な妹だから」

アイスが溶けてしまいそうなくらい温かい室内でテレビの音はいつもより少しだけ五月蠅くて。

胸もとのリボンを床に落としながら制服のボタンを一つ二つ、外していく。それからヒラヒラの青いスカートも。

さっきまで騒がしかった居間で下着姿になっても、しんのすけは何も言わず、ひまの汗で濡れた額に触れた。

誰に触られても反応なんてしないくせに、しんのすけの指先が肌にあたるだけでもう身体は敏感になっている。

「好きな男を虜にするように女の身体ってよく出来ているよ」と、何かのドラマに出ていた俳優が困ったように呟いていたシーンが少しだけ思い出された。


「綺麗?」

「…それを俺に訊くのはどうかと思うぞ。ひま」

「だって、」

「拗ねると不細工になるぞ。外、暑かったでしょ。先にお風呂にする?」

「…一緒に入る」

「ひまは、いつまでたっても子供ですなぁ」

「背中、流してあげるよ。いいでしょ?」


大人顔負けの妖艶なひまわりの微笑みに、しんのすけは将来が心配になってきますなぁ、と少しだけ兄らしい顔を崩してみせた。


end.
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