短編2[BL]

□隣人の愛し方
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「それでいいの?」

ダムダムと響くバスケットボールの音と体育館に響くクラスメイトの声

今日はクラス対抗の競技戦だと言うのに、ヤル気のないしんのすけにマサオは言葉を跳ね返す。


「…失恋できたってことは恋もできたってことでそれで満足だぞ」

「諦めるなんて、しんちゃんらしくない」

「マサオ君こそいいの?俺はずっとマサオ君はネネちゃんのことが好きなんだと思ってたぞ」

いつも、ネネちゃんの隣にはマサオ君がいたような気がする。もし、ネネちゃんの好きな相手が俺じゃなくてもマサオ君なら良かったのに。

二人とも大切だから、そんなネネちゃんとマサオ君が恋人同士なら俺は多分、今よりは明るい気持ちになれたと思う。

「…ボクは臆病者だから、自分に好意を向けてくれる相手しか好きになれないんだ」

「好意?」

「だから、ネネちゃんはしんちゃんが好きなんだと思ってたんだけど」

「好きな相手から好かれていたら苦労はしないぞ、マサオ君」

「…今は分らないけど…ネネちゃんは昔からしんちゃんが好きだったよ。無自覚な時期もあっただろうけど」

「友達として、でしょ?もう何年も一緒にいると恋と愛情って区別できないんだよね」

「だ、けどしんちゃん、は…ネネちゃんに…自分より…も大切な、人が…いてもいいの?」

何度かバスケの試合に集中しょうと戦っているクラスメイトに目を向ける。だが、ボーちゃんの声にしんのすけは開きかけた唇を閉じた。


「嫌に決まってるでしょ。子供の我儘みたいで笑っちゃう?」

「…笑わな、い。でも…しんちゃんが諦めるのは…まだ早い…と思う」

そうだよ、と相槌を打つマサオにしんのすけは無邪気な笑顔を浮かばせ、背番号の入ったゼッケンを掴んだ。

しんのすけのチームが試合をする時間になったからか、女子生徒は話すのを中断させ、そこに意識を集中させ始める。

誰もが注目しているその瞬間さえも、しんのすけは自分の好きな女性の好みばかりを考えていた。

(年上ってのを除けば…俺の好みって全部ネネちゃんに当て嵌まるなぁ)


マサオ君の言葉が本当ならば、ネネちゃんはずっとこんな俺に片想いなんてしていたのだろうか?でも今更だ。

俺は叶わない恋をすることでしか生きられない。でもそれでいい。失うものなんて少ない方がいいんだぞ、本当ね。
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