短編2[BL]

□君を好きで良かった
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「風間君、お手」

「…お前なぁ、僕は犬じゃないんだぞ」

公園のベンチ。しんのすけは、僕の手を掴み両手と両手を合わせた。うすい皮膚のした。そこには核心があるのに。

触れるのが怖い。しんのすけ、きっとお前もそうだったんだろう。あの日の温もりを覚えていようと思っていたのに。


もう思い出せるのはお前が、すごく震えていたことだけだ。


「病めるときも健やかなる時も共に歩み死が二人を分かつまで互いを親友とし神聖なる契約のもとに誓いますか?」

「誓いの真似ごとか」

「そうだぞ。似てるでしょ、ねぇ風間君。俺は風間君の一番、傍にいたかったんだぞ」

「…、ああ、僕もだ。すぐ傍にあったのに僕はそれを手放したんだ」

「知ってたぞ。あのとき震えてる風間君に好きって言うのが怖かった」

「…僕もだ。震えているお前に好きなんて言えなかった」


今なら言える、でも意味も状況も変わってしまった。互いに超えてしまった一線、けれど伝えられなかった言葉達。


「…バイバイ、風間君。俺の結婚式で泣かないでね。俺、風間君の涙には弱いから」

「安心しろ。お前に捧げる涙などない………、おめでとう。しんのすけ」



「ありがとう」


泣かないと決めた。振り返らないしんのすけに、僕はそれでも泣かないと決めた。お前も泣かないと思ったから。

呼吸するのと同じくらい好きだった。病めるときも健やかなる時も愛していた。けれど、もう。


「さようなら」


の、お時間です。お前を好きになれて僕は幸せ者でした。さようなら、さようなら。どうかお元気で。さようなら。

end.
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