短編2[BL]

□蜃気楼
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「…ネネちゃん昨日は…ごめんね。でも俺も付き合いがあるんだぞ」

「それは、彼女のネネよりも優先することなの」

これでは仕事と私どっちが大事?ってくだらない質問と同レベルだ。

でも言ってしまった。訂正する気もない。そんな自分が酷く哀しい。


「ネネちゃん」


授業のチャイム。もう昼休みが終わって午後の授業が始まる頃だ。

それでも、立ち入り禁止の屋上から一歩も動けないでいた。

こんなに空は綺麗なのに、しんちゃんの心が掴めなくてもどかしい。


「…ネネちゃん、俺のこと嫌いになったでしょ」

「どうして、そんなこと言うの?知ってて言ってるなら最低だわ」

「…うん、最低だぞ。でも、ネネちゃんには愛されていたい」


お揃いのストラップ。抱きしめられて、肩越しから見えた彼の携帯。

赤い色がしんちゃんらしいと思った瞬間、携帯に電話がかかって来た。

液晶画面には登録されていない番号が何度も地面の上で震えている。

「…しんちゃん」

声をかけるが、しんちゃんはネネの胸に顔を埋めたまま黙っていた。


「しんちゃん、電話…でないの?急用かもしれないのに。いいの?」

「いいんだぞ」

「……でも、」

二度目のコール。やはり急ぎの用事じゃないだろうか?

思い切って出てみたら甘ったるい、可愛い声が耳に響いた。

『野原君?』

「――ッ!」

聞いたことの無い声。未登録の番号。嫌な予感しかしない。

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