短編2[BL]
□誰にも言えない
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「俺、ネネちゃんになら刺されてもいいんだぞ」
「…そんなことしたら、しんちゃんを殺してしまうもん、嫌よ」
「俺は…ネネちゃんが居たらそれでいいんだぞ」
「やだ。しんちゃんは優しい嘘吐き。ネネだけじゃ足りないくせに」
どんな恋も、どんな愛もネネにとっては難題だ。
相手がしんちゃんならば、尚更。好きだけじゃどうにもならない。
「目の奥に期待ばかりのぞかせてるその顔が好きだぞ?また明日」
「…ふふ自意識過剰よ、しんちゃん。また明日」
しんちゃんはネネを好きにはならない。けれど。
ネネ以上に好きな相手も彼には現れないだろう。
「しんちゃんにとって、ネネちゃんは恋人でも家族でもなくて…さ」
「マサオ君」
「多分もっと違った関係なんだと思う。ネネちゃんだけは特別だから」
「…特別って卑怯だわ。ネネは、特別じゃなくて愛されたいだけ」
チャイムがなって、廊下を歩く生徒が駆け足で目の前を去って行く。
ネネも、マサオ君も、黙っているボーちゃんもそれを眺めていた。
「…愛された、としても…それは幸せ、にはならない、だから」
「ボーちゃん」
「しんちゃんは、ネネちゃんを傷つけることが何よりも怖いんだよ」
「そんなの屈折してるわ。ネネは頑丈だから壊れたりしないのに」
深い溜息と一緒に、マサオ君は少し微笑み、ゆっくりとネネをみた。
「しんちゃんが好きなのは…ネネちゃんだよ」
「…うん」
(知ってるわ。分かってる。でもね、マサオ君)
しんちゃんは、ネネの好きに堪えられないのよ。
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