短編2[BL]
□約束
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しん+ひま
「ねぇ、ひまわりは本当にこの家の子なの?ママとパパの子供なの?しんのすけの妹なの?」
「当たり前でしょ」
「その、証拠は?」
「証拠は…ないぞ」
テレビを見つつ、ひまわりの言葉に答えるしんのすけに、ひまわりはムカムカする気持ちを両手で抑えた。
「…ひまは…しんのすけの妹じゃないもん」
「…証拠は?」
「ない、けど…違うもん!ひまは違う家の子で、しんのすけの妹じゃないもん!妹なんて嫌だもん」
「俺が、お兄ちゃんで…ひまわりは嫌なの?俺は、ひまわりが妹でこんなに嬉しいのに?それは悲しいぞ」
ポツリ、小さく聞えたしんのすけの声に、ひまわりは肩を震わせ「違うもん」とテレビの音に掻き消された。
「しんのすけが…お兄ちゃんだと嫌だ」
「何で?」
「何でも」
「理由が分からないぞ、嫌だからどうしたいの?嫌だったら何でも解決するの?違うでしょ?」
怒っているのか呆れているのか、少し強くなるしんのすけの口調に、ひまわりは言葉を詰まらせ涙を零す。
ボロボロ、流れてくる涙はテレビに集中する、しんのすけには見えないだろう。
「しんのす、けは…ひまじゃない誰かと結婚するの?」
「…ひまが俺に結婚しないでって言えばしないぞ」
「じゃあ、誰とも結婚しないで…ひまの傍にいて」
「一生?」
「…うん」
テレビから聞えてくる、笑い声。けれど、ひまわりの心のなかは思ったよりもずっと静かなままだった。
「ひまも」
「なに?」
「ひまも一生、結婚したら駄目だぞ?俺も、ひまも、結婚しない。お墓まで俺達はずっと一緒」
「…うん」
ボロボロ溢れる涙に、しんのすけはやっと気付いたのか、少し驚き、それから長い指先をひまわりの頬に寄せ、その涙を拭いとる。
「手のかかる妹ですなぁ」
「…ずっと一緒にいられるなら…ひまは妹でいいもん、だから約束してね。しんのすけ」
end.