短編2[BL]
□勿忘草の途中
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「そうだよ、しんちゃん…記憶だって一時的なものだって、言ってた」
「ボーちゃん」
皆の優しさが痛いなんて、こんなことを思ったら不謹慎かもしれない。
けれど痛かった。あいちゃんが事故にあった日。
あの日、俺はあいちゃんに酷いことを言ってしまったのだ。
「あいは…本当に本当に…しん様が好きですわ」
「…うん。知ってるぞ。でも俺、年下にも同級生にも興味ない」
だから、あいちゃんだけが対象外になることもない。いつもの台詞。
けれどあいちゃんは聞き慣れてしまったのか俺をみて小さく微笑んだ。
「あいちゃんもさ、俺なんか忘れた方がいいぞ」
「…しん様」
「叶わない恋なんて…あいちゃんには似合わない…そうでしょ?」
「それでも、あいは…しん様がいいですわ…それはいけないこと?」
夕日が落ちる寸前
ガタンがタン、電車が近づいてくる音に耳を傾けその場に立ち尽くす。
「ごめんね、」
そう微笑んだ俺に、あいちゃんは少しだけ困った顔をしていた。
あいちゃんは何かを言いかけてそれからもう一度、強く俺を見た。
「優しくしないで下さい…しん様…あいは…それが1番辛いですわ」
「あいちゃ、」
「あいは…こんなに…しん様が好きなのに…あいは…しん様だけが!」
「忘れてよ、あいちゃん。もう俺に何も…期待なんてしないでよ」
好きだと言われることに慣れていた。だから鬱陶しいとさえ思っていた
あの日の言葉。あいちゃんがどんな気持ちでそれを聞いていたのか。
俺には分からない
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