短編2[BL]
□砂糖は幾つ?
2ページ/4ページ
「黒磯さんが、どう解釈してもいいけど怒るのはどうかと思うぞ」
「私は怒ってなど」
「じゃあ、どうしてさっきからプリプリしてるの?俺が悪いみたいでしょ?言いたいことがあるなら言った方が楽だぞ」
「…私は、別に」
黒い眼鏡が曇っていく。ゆらりくらり、しんのすけは小さくなっていく黒磯を眺めて微笑んだ。
「あいちゃんの傍は安心?」まるで囁くような言葉に黒磯は眉を潜める。
「…怒った?」
「いえ、ただ…少しばかりそんなことを思われていたのが心外なだけです。ケーキ、食べないのですか?」
いつの間にか置かれていた苺タルトを見つめ、しんのすけはフォークで苺をブスリと刺すと「赤いね」と黒磯の前に傾ける。
「お嬢様が…貴方に好意を向けていることはご存知ですか?」
「知ってるぞ」
「私が言うのも何ですが…お嬢様のことをどう思っているのですか」
「美人だと思うぞ」
「それだけですか」
「それだけも何も同情じゃ恋は生まれないでしょ、ああでも同情からはじまる恋も俺は嫌いじゃないぞ?でも与えられるだけの愛に頷けるほど俺は優しくないだけ」
「そうですか」
最後の一口。甘いタルト。苦いコーヒー。胸が熱くなる温度と静けさは頭を打たれたような緊張感を与える。
「黒磯さん、俺ね」
「……何ですか?」
食べ終わったのか、それとも時間なのか、席を立つしんのすけに黒磯はガタッと揺れた机を見つめ、しんのすけの顔に視線を移す。
光の加減か、はたまた逆光の所有か、彼の顔は思ったほど良くは見えない。うっすらと、口元が覗えるくらいだ。
.