短編2[BL]

□砂糖は幾つ?
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「黒磯さんが、どう解釈してもいいけど怒るのはどうかと思うぞ」

「私は怒ってなど」


「じゃあ、どうしてさっきからプリプリしてるの?俺が悪いみたいでしょ?言いたいことがあるなら言った方が楽だぞ」

「…私は、別に」


黒い眼鏡が曇っていく。ゆらりくらり、しんのすけは小さくなっていく黒磯を眺めて微笑んだ。

「あいちゃんの傍は安心?」まるで囁くような言葉に黒磯は眉を潜める。


「…怒った?」

「いえ、ただ…少しばかりそんなことを思われていたのが心外なだけです。ケーキ、食べないのですか?」


いつの間にか置かれていた苺タルトを見つめ、しんのすけはフォークで苺をブスリと刺すと「赤いね」と黒磯の前に傾ける。


「お嬢様が…貴方に好意を向けていることはご存知ですか?」

「知ってるぞ」


「私が言うのも何ですが…お嬢様のことをどう思っているのですか」

「美人だと思うぞ」


「それだけですか」

「それだけも何も同情じゃ恋は生まれないでしょ、ああでも同情からはじまる恋も俺は嫌いじゃないぞ?でも与えられるだけの愛に頷けるほど俺は優しくないだけ」


「そうですか」

最後の一口。甘いタルト。苦いコーヒー。胸が熱くなる温度と静けさは頭を打たれたような緊張感を与える。


「黒磯さん、俺ね」

「……何ですか?」


食べ終わったのか、それとも時間なのか、席を立つしんのすけに黒磯はガタッと揺れた机を見つめ、しんのすけの顔に視線を移す。

光の加減か、はたまた逆光の所有か、彼の顔は思ったほど良くは見えない。うっすらと、口元が覗えるくらいだ。

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