短編2[BL]

□知るは罪
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「野原君、今からバイトだったよね?あまり無理はしないように。君はすぐ無茶をするから」

「…はは、それは代々木君もね!大会前に怪我なんて駄目だぞ」

バイバイ、と手を振って君は走っていく。ボクは三年前のあの日から君の唇がひそかに震えていたことを今も覚えているというのに。

「…駄目だ、」

このままでは、いけない。そう何度も頭の中で繰り返しているのにボクは友人として、この関係を壊しきれないでいた。


「野原くん、」

言わなければならないことが沢山、あるのに。結果こうして今もボクは「忘れたフリ」をして茶番劇を継続させている。

「友人?」「親友?」「でも今更?」そればかりがボクを悩ませた。もう、どうして好きになったのかすら曖昧なのに。


「代々木君!」

「…野原君?」

もう、バイトに向ったと思っていたのに君は交差点を通り抜け、ボクの名を大きく叫ぶ。


「代々木君…俺に言いたいことがあるんでしょ」

「…ない、よ」

「嘘だぞ!だって、代々木君…三年前に俺にキスしたでしょ」

「してないよ」

キスなんてしていない。そんなの夢だ勘違いだ。ボクは怖くなった。君がまだ覚えていた事実と、その裏にある確信。

(だって、君に嫌われたらもうボクは息さえできなくなってしまうのに)

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