短編[BL]
□シンデレラ
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「……感じ悪い」
「ネネちゃん?」
「触らないで、しんちゃんって…デリカシーが足りないと思うわ」
抱いて、なんて頼んだネネもデリカシーなんて足りないけれど。
(ああ、駄目だ。この空間は…ネネには毒なんだ。早く帰らなきゃ)
急いで手にした衣服を掻き集め、ワンピースのチャックを開く。
「もう帰るの?」
「…ママに外泊してくるなんて言ってないもん」
「言えば?どうせ今日は俺の家…誰もいないし」
「…いやよ」
このまま一緒?朝を迎えるつもり?やだ、恋人同士みたいじゃない。
そんなこと、望んだって手に入りはしないのに。
「…12時になる前には帰らなきゃ…いけないの」
「はは、ネネちゃんってシンデレラみたいだね」
「…、やっぱり…しんちゃんってデリカシーが足りないと思うわ」
無残に放り捨てられているネネの靴下を奪いとり、しんちゃんを見る。
そこにあったのは、信じられない表情で、ネネは咄嗟に手を離した。
「本当だぞ?ネネちゃんって、シンデレラみたいに可愛かったぞ」
「嘘つき、」
にっこりと、息苦しそうに微笑んだしんちゃん。
目が合わせられなくなって、思わず下を向いた。
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