短編[BL]
□恋もまた唄う
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しん+あい
大体において
自分に甘く優しかった母が、一つだけ許してくれないことがあった。
恋もまた唄う
「お花屋さんになりたいの?でもそれは駄目よ」
「どうしてですの」
「貴方は酢乙女の長女。立派なお嫁さんにならなきゃいけないの」
幼い私に、母は懇々と諭すように口をひらいた。
夢ってなんですの?自由ってなんですの?頭の中の質問に誰も答えてはくれなかったけれど。
ここは籠の中の家だ、とあいは理知的な部分ではそう納得してた。
「しん様、今日こそは、あいとデートしましょ」
「えー…、めんどくさーい…それに俺ってば買い物があるんだけど」
「それに付き合いますわ、車を正門に呼びますわね、しん様」
渋々と鞄の中にゲームを詰めこむ、しん様の腕を掴み教室のドアを開く。
他校の生徒である私が堂々としん様の学校に訪れる。いつもの日常。
「あれ?あいちゃん、今日もしんちゃんに会いに来てたんだ」
「当たり前ですわん」
「おお、マサオくん!助けてよ、あいちゃんってば強引なんだぞ」
「強引な方が、しんちゃんは好きだって前にボクに言ってたよね」
にこっと、微笑むマサオに、しんのすけはゲッソリと鞄を持ち上げる。
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