短編[BL]
□恋もまた唄う
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「…ネネちゃんが職員室から…帰って来る前に帰ったほうが、いい」
「ボーちゃん」
確かに、それはそうだ。ネネちゃんとあいちゃんは犬猿の仲。
いや、2人はライバルと認めているからこそ、そうなったのか。
「それもそうですわね、しん様!行きますわよ」
「ほいほい」
教室を出て、正門をくぐり夕方の雑踏の中を2人並んで駅まで歩く。
「しん様、黒磯を呼ばなくて良かったですの」
「いいの、いいの。俺は車より歩いて帰るタイプなんだぞ」
知らなかったでしょ、そう言って笑顔を浮かべた、しんのすけ。
あいは胸の中で蹲る甘い恋の花を両手で押えた。
「…ん、」
「そんなに見つめられるとハズかしいですわ」
「あいちゃんには、もうちょっと薄い色の方が似合うと思うぞ」
「…え?」
改札が見えた所で、しんのすけがポツリと口を開いてわらう。
「ほら、口紅」
「…、しん様」
しんのすけの滑らかな指、その先端があいの唇を優しくつつむ。
アイスのように溶けてしまうんじゃないか、そんな錯覚を覚えた。
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