短編[BL]
□明後日の方角
3ページ/6ページ
きっと、ごめん、そうしんちゃんがネネちゃんに謝るのは分っていた。
だけど、ここは何とかしなければ。お互い、意地っ張りだから。
「じゃぁ、ボクが、ネネちゃんを探してくるよ」
「シロ?」
「大丈夫だよ、そんな顔しないで…しんちゃん」
ボクは少しだけ、しんちゃんより高い背をのばし頭にボクの手をおいた。
しんちゃんは払いのけることなんてしない。ボクを優しく見つめるだけ。
「待ってて」
そんな、しんちゃんがボクは好きだ。同じ顔なのに同じ声なのに。
まるで鏡に恋をしているかのような、甘い錯覚。
けれど、ボクとしんちゃんは根本的な部分があきらかに違うのだ。
「ネネちゃん」
「…、シロ?」
「泣いてたの?しんちゃんも心配してたよ」
「シロが迎えに来てくれたの?ごめんね、それと…ありがとう」
「ボクが、勝手に来ただけだから気にしないで」
「…優しいのね、シロは。しんちゃんと同じ顔でもやっぱり違うわ」
ネネちゃんは、長い睫毛を揺らし、廊下を一歩二歩、足を進める。
グッと詰まった喉のおく。大きな欠陥が口の中でじわりと息を殺す。
「しんちゃんは優しいよ、ネネちゃんがよく知ってると思うけど」
「…しんちゃんは優しいわよ、でも…シロ限定」
シロにだけ優しい。それはネネちゃんからみた第三者の意見?
けれど、ボクからみたら、しんちゃんはネネちゃんにこそ優しいと思う。
.