短編[BL]

□拍手文SS
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<しん+師匠(竜子)>



「おお、師匠!」

「あたいはおまえの師匠じゃねぇって何百回言やわかるんだよ」

竜子は自動販売機から落ちたアイスを口に、しんのすけを見る。

この暑い日に、よりにもよってコイツと出くわすなんて嫌な日だ。


「くそぅ、まだ背中のあたりが熱してやがる」

「それは俺が師匠の背中をじっと見ていたから」


何てこと言うんだと言えば夏が俺をそうさせた、なんて…くそぅ!

しんのすけの癖に、そう言いたかったが、目の前のこいつは高校生。

もう、あの生意気な幼稚園児ではないのだと思うと少し悔しかった。


「師匠は仕事帰り?」

「…ああ、そうだよ」

ふーん、そう言ってしんのすけの指先が汗で濡れた背中にのびる。

ソッと優しく撫でられた感覚に竜子はビクッと肩を揺らした。


「のヤローッ、このふかづめ竜子に何しやがる」

「…師匠、ブラウスの下から下着が透けてるぞ」


タラッと落ちた汗、しんのすけは微笑んで鞄からタオルを取り出す。

「ほい、師匠」

「いいのか?」

「いいよ、その変わり俺が好きって言って」

「なんで、あたいがんな事言わなきゃなんねーんだよ!ばーか!」


そもそも年齢を考えろ。あたいはもう、お前と同じ17歳じゃねぇんだ。

若気の至り、なんてのはとっくに青春とサヨナラしているんだよ。


「じゃぁ愛してるって「同じじゃねーか」」


溶けていくアイス。急いで口に運び飲み込んだ。

そんな竜子にしんのすけはタオルを背中に被せ隠すように微笑んだ。


女性の扱いに慣れているのだろう、そう思ったら酷く胸が痛む。


「……ありがと、な」

「どういたしまして」


夏、落ちる汗

お前と同じ17歳に埼玉紅さそり隊のリーダーだった、あの頃に。


(戻りたい、)

なんてことは決してありえない。けれど戻れたらどんなに幸せか。


「手、つなぐ?」

「……、やだね」


口に広がるバニラ味。遠い昔の思い出のように甘く懐かしい匂いがした。


end.
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