短編[BL]

□拍手文SS
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<しんネネ花魁ネタ>



「しんのすけ様、いつまでわちきを描くでありんすか?」

「しんのすけ、そう呼んで。ほら、動かないで」


ふぅと紫檀の煙に巻かれ霞んだ視界の向こうに煙管を咥えた青年。

艶やかな唇が、クスリと笑ったのが目にとまる。


「いけませんえ。ここでは野暮はなしでありんす、しんのすけ様」

「…吉原一の花魁であるだけあって絵になるぞ」


綺麗な筆がよこから右へ左へ左右に動く。淡い色を帯びた着色料。


「…綺麗、これがわちきでありんすか?」

「そうだぞ、それより…おねいさんの本当の名前…教えてよ」


「ネネ、桜田ネネと申します。しんのすけ様は」

清掻をかき鳴らしながら、しんのすけに小さくけれど確かに問いかける。


「野原しんのすけ、」

「野原、しんのすけ」


ネネの曖昧な視線。けれど、熱っぽくしんのすけを追いかける。

その様子にクスリと笑うと、ネネはしんのすけに囁いた。


「故郷は何処でありんすか?」

「ここから少し遠い…北の方角にある小さな村」


「…どんな場所でありんすか?」

「春になると桜が咲いて夏になるとスイカが美味しい秋は紅葉、」

冬は、雪。そう、しんのすけは酒を一口飲み干してネネの手を握る。



「春になったら此処から連れ出してあげるから」


煙管を置いたしんのすけの指先がぴんと張った弦を弾いてみせる。

そんな青年の行動にネネは少しだけ涙をみせた。


end.
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