短編[BL]

□拍手文SS
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<しん+ひま>


誰かに愛される安心感を、ずっと大切にしていこうと決めた。

けれど今はもう、どうやって「恋愛」をしたらいいのか分らない。

心だけでも



「こんなところで何、みてるの?しんのすけ」

「しんのすけじゃなくて、お兄ちゃんでしょ」

「…どうせ、女の人でも見てるんでしょ。アイス、食べる?」

「一口だけ」

ぼんやりとした、しんのすけの両目は二階のベランダから家の前を行き来する人々に注がれていた

呆れて溜息をつくひまわりを余所に、しんのすけは生返事を返しながらも齧ったアイスの冷たさに笑っている。

男女問わず様々な人が過ぎ去ってゆくのを、ふたりはまるでテレビ画面に釘付けになった子供のように眺めていた。


「あ、今のおねいさん可愛かったぞ」

「化粧が派手」

「あの、おねいさんは化粧を落としても美人だと思うぞ。ひま」

「性格が悪そう。しんのすけには似合わない」

「ひまわりは辛口ですなぁ。でもひまも悪い男には騙されちゃ駄目だぞ」

咽の奥で笑うように、溶けかけのアイスを頬張っているひまわりの頭を優しく撫でる。

こうしていると、いつまでも優しい時間が続くように思えた。


「お、発見。あの子、ひまの好みでしょ。なかなかの男前だぞ」

「…好みじゃないもん。もっと背が高くて…髪もちょっと短めで鼻筋もスッキリしてて」

「ほうほう」

「それで、ひまの頭を撫でてくれる手が大きくて…一緒にいると幸せになれて…ひまのこと大切にしてくれる人じゃないと…嫌だもん」

「そんな人、いないでしょ。ひまも母ちゃんに似て欲張りですなぁ」

「…いるの!」

ひまわりの小さな手がしんのすけの背中を叩いているが傍から見れば、それはもう仲良しな兄妹にしか見えないだろう。

少しばかり痛がるふりをして笑っているしんのすけの背中に今度はどかりと全体重が圧しかかる


「ひま、重たいぞ〜」

「ひまにはしんのすけがいるからいいの。ひまの頭撫でてくれるのも、しんのすけだけでいい」

「はは、ひまは撫でられるの好きですなぁ…でもひまの傍にはずっとはいられないんだぞ?」

「…ずっとが駄目なら…今だけでもいいもん」

「だったらもっと甘えてもいいぞ。お兄ちゃんに甘えるのが妹の役目でしょ。おいで、ひま」

「…っ、うん」


(なんでずっと一緒に居られないのだろ)

なんてことは互いに、もう考え尽くしてしまっていた。勿論、結論が出たことはない。

だからこそ、心だけは綺麗なまま此処に置いていこうと決めたんだ。


end.
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