短編[BL]

□拍手文SS
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<風間+野原>



風間君

その視線は痛いぞ


「おまえ…いい加減にしろよ、しんのすけ」

「おわ、風間君」

バシン、と頬を叩かれて何が起こったのか、思考は逆回転。

最近の風間君は少し横暴。それでいて心ここにあらず、って感じ。


「ボクの周りの女の子に手を出すなって何回も言っただろ!」

「…減るもんじゃないでしょ。それにあっちから誘って来たんだし」


落ちた鞄を拾い、熱くなった頬に指先を添えた。

(風間くんに殴られたなんて何年振りだろうか)


「おまえ…最低だぞ。しんのすけ…何で大切にしてやらないんだよ」

「大切にしてるぞ!だけど風間君、恋愛なんてこんなもんでしょ」


好きだ好きだ、なんて結局は全て自己満足。好きなんて自己犠牲。

本当に好きな人こそ手に入らない世の中なんだ。


「しんのすけ、おまえは大事な友達だから今まで許してきたけど」

「…風間君、」


ああ、友達だと思ってくれていたんだ。嬉しいような悲しいような。

けれど、そう言ったら風間君は熱い視線を悲しそうに床に落とした。


「風間君っていつもそうやって俺の顔みるよね」


風間君は何だ急にと言いかけて目線を合わせた。

少し頼りない熱い信号。ああ、この目を俺はよく知っているぞ。


「いつも俺が女の子といると痛い視線ばっかり」

「なっ…!それは、おまえがちゃんと…してるか…睨んでたわけじゃ」

「…風間君…俺って恋愛体質でしょ。勘違いしちゃうぞ、その視線」


俺が好きなの?が何百回。やっぱり違う?が二百回。やっぱりが三百回。

そうやってギリギリの視線、ってのは余裕をなくす。勘違いをする。


「ちが…!しんのすけ…ボクは…ただ!違う」

「…うん」

「勘違いしていいんだ…!ボクは…しんのすけ」

「風間君、言ったでしょ俺が大事な友達だって」


優しい笑顔

熱い視線は、ギリギリのラインを保ち笑顔にかわる。何てことない。


これはただの恋愛


(ああ、だけど)
(しんのすけ、)

((最初に視線を合わせてしまったのは運命だ))




end.
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