短編[BL]
□拍手文SS
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<アクション仮面(郷)+しん>
この恋があれば生きていける、その為の嘘だ。
「私は、しんのすけ君。君のヒーローでずっといたかったんだよ」
「チャンネルを回せばヒーローは沢山いたぞ」
「…そうだね」
「でも、俺はアクション仮面しか…好きになれなかった…んだ」
触れ合った手が、溶けてしまいそうな互いの距離がとても怖かった。
このまま無数の固体になればいい。このままいっそ消えてしまえれば。
「それでも、俺と一緒になってはくれないの」
「…しんのすけ君には幻滅されたくないからね」
「幻滅なんて、しないぞ。もう10年も待った…ずっと待ってた」
「それでも、その先は私には怖いんだよ。私も、もういい年齢だ」
これから本気の恋?なんて、君に捨てられる未来しか想像できない。
愛してると呟いた数だけ、瞳を輝かせて私を見ていた君を思い出す。
「…しんのすけ君。私は君の恋人じゃない。君のヒーローでいたい」
「っ、郷さ、ん!」
するり、やっとほどけた両手。君を抱しめていた温もりが去っていく
「俺が…っ嫌いなの?ねぇ、アクション仮、っ…郷さ、ん…!」
「っ、嫌いだよ」
大きく開いた君の両目。大粒の涙がぼろりぼろりと落ちていく。
(なんて、私が君を嫌いになる筈ないのに。けれどこれでいいのだ)
「…しんのすけ君、また夢の世界で…会おう」
そうやって、
今日も明日も明後日も、嘘だけが上達していく。
この恋があれば生きていける、なんて好き過ぎて君には言えなかった!
end.