短編[BL]

□拍手文SS
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<ボーしん>



それを、


「誰が認めてくれるの?」叱るでも呆れるでもなく幻影は微笑んだ。

その言葉を、誰が言ったのかは覚えていない。


「ボーちゃんは俺が女の子だったら、今よりも喜んでくれた?」

「…な、にそれ」


学校の帰り道

唐突な質問にボクの胸は、じわっと焼けつくように疼きだす。


「…だって、ボーちゃん俺には勿体無いでしょ」

「どう、して…そう思うの?しんちゃんこそボクには勿体無い、よ」


しんちゃんが、ボクじゃない誰かを選ぶと思うと夜も眠れない。

(ボクは大声で叫んでしまいたいくらい、しんちゃんが好きなのに)


路上で抱しめてしまいたい気持ちを抑えボクはしんちゃんの隣を歩く。

男同士が一緒に歩くにしては少しだけ近すぎる距離かもしれない。
けれどそれはボク達が手を繋ぐには遠い距離だ。


「…しんちゃん、どうしたの?誰かに何か言われた?し、んちゃん」

「何でもないぞ」


「…何でもない、って…隠すのが…下手だよ…しんちゃん」

「ボーちゃ、」

しんちゃんの唇の端。少しだけ切れた血のあとにボクは驚いた。

「誰かに殴られ」

「違う…違うぞ。誰にも殴られてない…自分で殴ったんだぞ」

「…どうし、て」

「いや…になったんだぞ!俺もボーちゃんもだって男同士で」


「恥ずかしくなった、の?しんちゃんは怖くな、ったの?」

ギリギリと痛むのだろう。それでも離さなかった

ボクはしんちゃんの腕を掴み、逃げないように固定した。


「だって、俺がいるとボーちゃんが幸せになれないでしょ!」

「幸せになんてなりたいわけじゃないんだ、よ」


ボクは不幸で構わない。でも、それはしんちゃんも道連れだ。

幸せになるのも不幸になるのも、それから一緒に生きていくのも。


「だか、ら…もう自分を傷つけ…ないで、しんちゃん」

「ボーちゃ、ん」

「自分が許せなくて殴りたくなったら今度はボクを殴って」


ボク達は愛し合っている。誰にも認められなくていい。

だって、もうないんだ。ボクにはしんちゃんしかもういらないんだ。


愛だって叫ぶよ!



end.
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