短編[BL]
□アザレア
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「でもな、何もしらない奴がおまえのことを上辺で判断するのは」
「…うん」
「イヤなんだよ!」
あのとき、誰かを殴る気持ち。違う。違うんだ。
本当は自分を殴ってしまいたかった。何も知らないのはオレなのに。
体育館、
冷たい床に身体を押し付け頭を抱えるオレにしんのすけは口を開いた。
「俺バスケもサッカーも友達も家族も好きだぞ」
「…?ああ」
「だけど、どこかで休みたいときもあるんだぞ」
「…!ああ」
ああ、そうか。そうだよな。悪い、しんのすけ。
おまえだって1人になりたいときくらいあって当たり前なんだよな。
いつも誰かが傍にいて、誰かに笑顔を向けて…疲れたのか、お前。
「…しんのすけ、疲れたら…オレのとこに来い」
「おお、男前」
「あたり前だ」
金髪に輝く河村の髪。それを、しんのすけは笑いながら感謝した。
「キスする?」
「…何でだよ」
馬鹿か、おまえ。やわらかい河村のその口調。
しんのすけは穏やかになるこの安心感を、きっと一生忘れないだろう。
そう心に誓った。
end.