短編[BL]
□アザレア
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「…しんのすけ」
「ほいほい、何」
スローモーション。逆光。それでいて、いつもと違うこいつの横顔。
綺麗に決まる、しんのすけのミラクルショット。
「…おまえ、風間が言ってたけど悪運と運動神経だけは一流だな」
「褒めても何もでないぞ?…それで河村くんの話しってのは勧誘?」
「ああ、おまえが入ってくれたら他の奴等も喜ぶんだよ。戦力になる」
悪運。そしてズバ抜けた運動能力。お前にだけは一度も勝てた事がない。
いつも、ライバルとして見ていたことすらお前は知らないのだろうけど。
ぎゅっと、拳を握る河村にしんのすけは苦笑いを浮かべ微笑んだ。
そうして「俺には無理だぞ、ごめんね」と河村に言ったのだ。
「…くそ、」
その何かを言いかけてやめる顔が、笑顔が河村は苦手だったのだ。
「野原って悩みがなさそうだな」そう言っていた友人が河村にいた。
そのとき、河村は無意識のうちにその男を殴ってしまった覚えがある。
今になって思い出してきた、あの日の熱い感覚。
「…、オレは…お前が昔から嫌いだしんのすけ」
「おお、直球」
「必死になってお前に勝とうとしても…いつもオレはお前に負ける」
「…、」
勉強だってスポーツだって、何に対しても勝った試がないのだ。
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