短編[BL]

□春眠暁を覚えず
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「なら尚更、獄寺…お前には負けられねぇな」

「なに笑ってやがる」


殴られそうな勢いで詰め寄った獄寺に山本はフェンスに背を預けた。

ガシャン!という音と共に獄寺は山本の胸グラを痛いほどつかむ。


「獄寺、初恋の最大の魅力って何かわかるか」

「何だそりゃ」


「恋がいつかは終わるということを知らない点にある、らし─のな」


ディズレーリって誰かの言葉、唇を噛み締め山本は瞼をとじた。

恋を知らなかった。けれどいまその恋という初恋を山本は迎えている。


つまり、それはそういうことだ。終りを知らないということなのだ。


「なぁ、獄寺もしオレの初恋がツナだって言ったらどーする?」

「…本気か?」


山本の告白に獄寺は殺気を抑え指先をとかす。

驚きと少しの混乱、それが今の獄寺を支配した。



「…ああ、オレな今まで誰かを特別に思ったことなんてねぇんだ」


誰とでも仲良く、誰とでも平等に、それでいいとずっと思っていた。

ただ、あのひ。屋上から飛び降りようとしたオレにツナは手を伸ばした。


(誰もが見捨てたオレの手を、誰もが本気にしなかったオレの手を)

あれが恋じゃなきゃ?なら何が恋なのだろうか。


「オレ、スゲ─ツナが好きなのな。初恋なのな」


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