短編[BL]
□cry for the MOON
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「いきなり帰ってくるなんて…あいつは妖怪か」
ねぇ、シロ?
ふわふわ毛玉の愛犬を優しく撫でながら鎖を繋ぐ
心なしか、少しだけシロの尻尾がいつもより多く左右に揺れていた。
「…お前も、しんのすけが帰って来て嬉しいの」
「わん!」
はは、何て可愛い子。思わずそう言いたくなっちゃうほど素直だわ。
「…シロっていいね。ひまもシロみたいに素直に生きてみたいよ」
「くぅん」
「お散歩行こうかシロ」けれどシロはリードを引っ張りガラスを叩く。
ガリガリ、ガリガリ、家の中では母と兄が何か言い争っていた。
「………シロ?」
「わん!わん!」
それでも懸命に訴えるシロにひまわりは疑問符を浮べ立ち上がる。
「母ちゃん、この話はあとで!ホラ、シロが俺を呼んでるから」
「…ったく、早く帰ってきなさいよ。それと大根買ってきて頂戴」
人使いが荒いんだからぁと口を尖らす兄の姿にシロは抱きついた。
ああ、いいな。そうやって素直になれるのって。
「…ひま?」
「…え、あ」
呆然と立ち尽くす
いつの間にかリードは兄が持っていて隣を歩いていたからだ。
「どうかした?」
「…ううん何でもない…シロが喜んでるなぁと思って…それだけ」
「シロは俺が好きだからなぁ…あー…犬って素直で羨ましいぞ」
「しんのすけ」
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