短編3[BL]
□花言葉は実らぬ恋
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「また女の子からの電話でしょ?」
「どしてそう思うの。妹からだぞ」
部屋に戻ってきた彼女の手にはコーヒーカップが二つ、色違いのものが揃えられていた。
手渡されたカップに口をつけ、ゆっくりとすする。苦くて少しだけ甘い。
「しんのすけ君、妹がいるの?」
「いるぞ」
「可愛い?」
「うん」
即答した俺に一瞬、驚いた表情をして彼女は画面に視線を送る。
そこにはまだ妹の名前が残っていた。
「電話してあげなくていいの?きっと心配してるのよ」
「………」
「しんのすけ君?」
黙ったままの俺を覗きこむようにして屈んだ彼女の右手を掴み引き寄せる。
そのまま真正面から抱きしめるような形になって彼女の柔らかい胸に顔を埋めた。
どうして他の人を抱いても、愛を囁いても妹のことが頭から離れてくれないのだろうか。
此方の様子を窺う気配を感じて俺は曖昧な笑みを浮かべながら視線を合わせた。
「ねぇ、」
「うん」
「しんのすけ君、他に好きな子がいるの?」
「どして?」
「なんとなく。女の勘」
「…はは。いないぞ」
冗談めかした口調で答えながらも内心は焦っていたのかもしれない。
誰にも言えない、この感情の裏側を知られるのは怖かった。
* * *
「おかえり、しんのすけ」
「…まだ起きてたの?もう夜中の2時だぞ?」
チラリと壁に掛った時計を確認しながら薄暗いリビングで膝を抱えて座っている妹を見つける。
電気を点けようとすると「やめて」と言われたので、そのままにした。
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