短編3[BL]

□花言葉は実らぬ恋
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「どしたの?彼氏と喧嘩でもした?」

「したけど…でも、ひまは悪くないもん」

「分かってる…ってそんなに抱きついてきたら暑いぞ」

「ふふふ」

「今日は甘えん坊ですなぁ」

「…うん。やっぱり一番、安心するよ。オニーちゃん」

心臓の音、薄い皮膚、甘い声、背中から伝わってくるその全てが吐き気がしそうなほどに愛しい。

なのに、どうして心の隙間は埋まってくれないんだろうか。満たされたと思っていてもすぐに渇くんだ。



* * *


「しんのすけ君、起きて。携帯鳴ってるよ」

「ん。まだ眠いぞ」

「ふふ、今日もお泊りする?わたしはいいよ」

「んー…」

もぞもぞと布団の中から手を出して床に投げ捨てていた携帯を探り出す。

隣でくすくす笑っているのは以前バイト先で知り合った女性だった。

年上なのに甘えん坊なところが少しだけ、ひまわりに似ている。

「どうかした?」

「いや、何でもないぞ」

「わたしコーヒー淹れてくるね」

「ほいほい」

薄いシャツ一枚で台所に向かう彼女の背を眺めながら着信のあった番号を確認すると、やっぱり妹からだった。

なんとなく後ろめたい気持ちになりながら、もう一度ベッドに寝転がる。そう言えば、もう3日も家に帰っていない。

履歴は殆ど妹の名前が続いていた。きっと心配させているんだろう。それとも怒っているんだろうか。

今、声を聞いたら多分、俺は走ってでも帰るんだろなぁ。あの家へ。

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