短編3[BL]

□秘密
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「そうとも言う〜。俺、年上にしか興味ないんだぞ」

「知ってるわよ」

「だから、ネネちゃんのことは口説かないぞ。一生ね」

「…っもういい」

バンッと強く教科書で叩かれた机が痛々しい。

ネネちゃんは急いで荷物を片づけると、俺に見向きもしないで教室を飛び出した。

自由奔放だとか行動が勝手すぎるとよく言われるけれど、ネネちゃんもなかなかのものだと思うぞ。


「おい、しんのすけ。まだ帰ってなかったのか」

「おお。チーター君」

「河村だ」

「ほうほう、それで河村君こそこんな時間に…っもしかして俺のリコーダーを舐める為に」

「違ぇよ!部活だ、部活。忘れモン取りに来たんだって…お前こそ、こんな時間まで教室で何してんだよ」


詮索するような河村君の視線が俺の足元に移った。ネネちゃんが落し忘れた苺柄のシャーペンがコロコロと床に転がっている。

机の上には散乱した教科書と途中まで書かれた数式の並んだピンクのノート。


「あー…桜田と喧嘩したのか?珍しいな、お前にしては」

「おお、ネネちゃんだってよく分かったね」

「お前が女相手に失敗するときは大体、桜田くらいだろ」

そんなことないぞ、とは言い切れない。ネネちゃんのことは幼馴染として大切にしてきたつもりでも何かの拍子に傷つけたくなるんだ。

誰かと幸せになることを望んだくせに、それを目の当たりにするとイライラする。滑稽なくらい矛盾しているけど。


「…お前さ、桜田のこと好きなのか」

「友達だぞ」

「そうは見えねーよ」

「ネネちゃんには自慢の彼氏がいるでしょ。高橋君、だっけ」

「まぁ、そいつ俺のダチなんだけど」

「けど?」

「お前に桜田を奪われるんじゃないかって不安がってるぜ」

「俺ってそんな軽薄そうに見える?そんなことしないぞ」

少し遠慮した仕草で話す河村君を見つめる。それに合わせて笑ってみせた。

ネネちゃんの落した苺柄のシャーペンを拾い上げ、開いたままの教科書を机に戻す。

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