短編3[BL]

□愛の片鱗
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まぁ、しんちゃんはそれでも女の子と交際することは止めないし、年上の美女が登場すれば鼻の下を伸ばしてしまうけど。

(…けど、ボーちゃんの一途さと比べたら、しんちゃんはとんでもなく悪い男だと思う)

「いい」

「なにが?」

「しんちゃんの浮気は、許して、いるから…いい」

「ボーちゃん?」

思わず固まったボクに、ボーちゃんは優しく穏やかな笑みを浮かべていた。


正直に言えば浮気を許せるってこと自体がボクには理解できないし、それを寛容に受け止められるだけの優しさもないけれど。いや普通の人はみんなそうだろう。

「ボーちゃん君のその考えは間違っている」と頭の中で抗議して、それを口にしょうと言い淀んでいるいると女の子と喋っていた、しんちゃんが此方に手を振ったのが分かった。


「ボーちゃん、男二人でコソコソなに喋ってたの?やらしいぞ」

「…やらしくないよ。しんちゃんこそ、なに…喋って、たの」

ちらりと、しんちゃんと抱き合っていた女の子を一瞥すると、ボーちゃんはしんちゃんの腕を掴んで逃げないように捕まえているように、見えた。実際そのつもりだろうけど。

ちょっと痛そうに身じろぎながら、しんちゃんは愉快に笑っている。

「ふ、気になる?でも駄目だぞ。教えてあげない」

「し…んちゃん」

男のボクから見ても顔も性格も嫌味なくらい完璧なボーちゃんが、しんちゃんの言葉一つで動揺していた。

焦っている色男ってのも、なかなか絵になる。今度、描く漫画の主人公にいいかもしれないなぁと違うことを考えているとボーちゃんの肩越しに、しんちゃんと目が合った。

「マサオ君、ボーちゃんのことあげないぞ」

ボクを試すような口ぶりは酷く嫉妬を含んでいる。そのくせ、それを表情に出さないところが、しんちゃんらしい。

女の子特有の甘い香水を制服に残したまま、しんちゃんはボーちゃんの腕に飛び込んだ。

他人の残り香をつけたままの、しんちゃんなのにボーちゃんはそれを咎めはしない。むしろ幸せそうじゃないか。

こうなってしまえば誰にも介入できない雰囲気がある。二人にしか分からない、愛の世界。それをボクは最後まで見届けたいと想った。


end.
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