短編3[BL]

□ネネあい
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※微百合/ネネあい



お腹いっぱい甘いお菓子を口に含んだとしても、鏡の前の自分を美しく着飾ったとしても。

なにをしても満たされないようにきっとこの水を吸って膨張したような醜い感情もいつかは失うのでしょう。


「やっぱ結婚するなら長男は避けたいよねぇ」

「あら?そうですの」

「姑と仲良くできる自信ないもの」

と、ネネちゃんは黒磯の淹れたジュースを飲みながら少し表情を崩して目に余るくらいとても優しく微笑んだ。


「あんたは綺麗だから女にも男にも好かれるけど、ネネは難しいのよ」

「…皮肉ですわね」


ぐるぐる。またぐるぐる。

ストローでオレンジジュースをかきまぜる彼女の仕草を真似てあいも紅茶をゆっくりとスプーンでぐるぐる、またぐるぐるカップの中の波紋を揺らす。


「外見の美醜に何の価値がありますの?」

「…それはあんたが綺麗なことに慣れているからそう思うのよ」

「あら?ネネちゃんも綺麗ですわよ」

「ネネは可愛い担当なの。だから綺麗なことは全部あんたに譲るわ」

「ふふ、何ですのそれ」

「ネネは綺麗なものが好き。だから、あんたのことも大切なのよ」

「…大切?」

カチャン、とカップが重なる音がして、あいは思考の中に沈み込んでいた淡い意識を現実へと戻した。

彼女は自分の言った言葉の意味も重さも理解しているのだろうか。

(あいの好きと貴方の好きは同じようで、全く違う色をしている気がしますのよ。ネネちゃん)

だって、あいは独占欲が多分ひとよりも強いのだと思いますの。一番すきな女の子のいちばんも自分であってほしいと思っている。

しん様に愛されたいと願ったように、どんなときも傍にいてくれた貴方のことも愛おしい。

それが友情なのか愛情なのか水を吸って膨張したような醜い感情に似て時折、不安になった。


あいのことを一番に考えてほしい。あいのことを誰よりも大切にしてほしい。あいのことをどんなときも優先してほしい。

そんなこと無理だって分かっていても貴方の言う「大切」にわたしの「好き」を押しつけてしまいそうになりますの。

それを知られてしまうことが怖いと思うくらいには嘘などひとつもないのに。


「当たり前でしょ。だって、あんたはネネの親友だもん」

「…そうですわね。ええ、あいとネネちゃんはずっと…お友達ですわ」

「約束だからね」

そう言ってネネちゃんは屈託なく笑った。

(…貴方のいちばんになりたい。どんな形でも。ずっと傍にいられるなら、それこそ)


あいは貴方から生まれたかったのかもしれませんわね。


end.

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