ちびまる子/他短編

□関口+まる子
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関口×まる子



ガラガラと少しだけ耳障りな音を立てる教室の戸を閉め教卓まで歩くと黒板を消そうと必死で背伸びをしている、さくらの「うう」と呻く声が聞こえた。

「さくら、日直か。貸せよ、お前じゃ届かないだろ」

「関口くん、ありがとう。あんたは頼りになるねぇ」

「…はまじはどうしたんだよ。あいつも日直だったろ」

「はまじは部活だよ」

「さくらは、はまじに甘いんだよ。どうせ全部やるからって引き受けたんだろ」

うーん、と図星を突かれて困っているさくらのつむじの辺りに目線を戻す。

(ほんとコイツ、背が小せぇ。成長してんのか?)


「なにさ?」

「いや、なんでも。ホラ消したぞ。日誌かけよ」

「うん。関口君って言葉は悪いけどさ…優しいよね」

「はぁ?」

「昔、私が自転車に乗れなかったときも助けてくれたでしょ」

「覚えてねーよ」

「自転車のコーチしてくれたよ。お陰で乗れるようになったんだよ」

「…そこの漢字、間違ってるぞ。馬鹿なこと言ってる暇があるなら集中しろよ」

「失礼しちゃう。フンだ、人がせっかく褒めてあげたのに」

日誌をめくったりしながら、そのほっそりとした手元を見つめて、さくらの座る前の席の椅子を引いて腰を下ろすと俺に見向きもしないでスラスラと文字を書き込んでいく。

視線は日誌の上に固定されたまま「関口君が今日、黒板を代わりに消してくれました。とても優しいです」と最後の欄にそんなことが記入されていて思わず席を立ちそうになった。

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