短編2[BL]

□Come closer
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「…しんちゃんは、ななこさんを好きになったとき理由があったの?」

「ないぞ」

「うん、だからボクも同じ。しんちゃんのこと気づいたら一番だったんだ」


できれば、マサオ君とはこのまま大切な幼馴染でいたいと思っている。なのに今更、親友から恋人へシフトさせることは有益なことなんだろうか。

そもそもマサオ君には将来、漫画家になる夢があって。いつか結婚して幸せな家庭を築くのがお似合いに思えた。

子供はきっと彼似の弱気な男の子で奥さんはネネちゃんみたいなちょっと気が強い…そんな想像ができてしまえるくらいには男同士って関係から縁遠い存在だ。


「しんちゃん来るもの拒まず去るもの追わず、なのにボクのことは躊躇するんだ」

「…誰でもってわけじゃないぞ」

「もし今、しんちゃんに告白したのが風間君だったら頷いてた?」

水の入ったグラスを握った指に、ギュっと力がこもる。もしもの仮定の話だ。けれど実際、風間君だったのなら受け入れていたのかもしれない。

きっと風間君ならば泣いて縋るか好きだって全身で訴えかけてくるくせに言葉にはしないかもしれないから、それについ構ってしまいたくなるときがある。

(だけどやっぱりそれは仮定の話だ。別に風間君じゃなくても、俺は頷くことができたかもしれない。だけどマサオ君だけは駄目だぞ)


「…この話は終わりだぞ。マサオ君」

「話が終わってもボクの恋は終わらないよ。しんちゃん」

「しつこいぞ!」

「そんなことないよ。真剣に考えてくれない、しんちゃんが悪いんだから」

「俺、男だぞ」

「うん、知ってるよ。さっきも訊いた。しんちゃんは男の子でボクの幼馴染」

マサオ君は困ったように笑うと俯く俺の前髪を優しく指でかきあげる。どうして俺なんか好きになるんだろう。

前髪をかき上げていた指に力がこもり、つい泣きそうな顔をマサオ君の目の前にさらしてしまう。

今、注文を聞きに来た店員さんが見たらびっくりする光景だろうに、強引ではないから振り解くこともできない。


「しんちゃん、今が駄目でも、いつかボクのこと好きになってよ」

「…おじいちゃんになってるかもしれないぞ」

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