短編2[BL]
□全てを間違える
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「ほうほう。それは誰か別の相手に恋をしてる、ってこと?」
「…どうかな。これが恋ならいつか終わってくれると思うけど」
「けど?」
「いつになっても終わりそうにないから、困ってるよ」
口内にじんわりと苦味が広がって気持ち悪い思いをする。しんちゃんが家を尋ねてくる数分前に慣れない煙草を吸ったからだ。
苦し紛れに息を吸い込むと痛みは埋まるどころか広がるばかりで、口調が早まりそうなのを懸命にこらえながら冗談だよと告げた。
「マサオ君を好きにならない人間なんていないぞ」
「しんちゃん」
「あいちゃんだってきっと、マサオ君の気持ちに応えてくれる日がくるぞ」
「うん、ありがとう。優しいね、しんちゃんは」
それでいて滑稽だ。もしかして、まだボクがあいちゃんを好きだと思っているのだろうか。いや多分、勝手に確信してるんだろうけど。
(…だからキミはいつもボクの本音を間違える)
「しんちゃん、応援はしないけど幸せにね」
「マサオ君もね。恋については俺に何でも相談していいぞ!泥船に乗ったつもりで」
「それを言うなら大船だよ、しんちゃん」
「おお!そうとも言う〜、でも俺はマサオ君の恋をずっと応援してるぞ。本当だぞ?」
「分かってるよ。しんちゃん」
自分の言葉で自分を傷つける。そうして、また君を嫌いになれない自分に嫌悪した。滑稽で愚かで厚かましい。
嫉妬は恋と一緒に滅んではくれないくせに。悲しいことは多分それだけ。
end.