ちびまる子/他短編
□親友の初恋
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大まる+杉山視点
「お前が、あいつのこと好きにならなくて良かったぜ」
と俺の親友は幾分、ほっとしたような声色で俺はその問われた質問に「あいつ?」と何とも馬鹿らしい返答をする。
大野が口にする「あいつ」とはつまり「まる子」のことだってことは熟知していても、慣れないものだ。
「…好きになるかよ」
「だろうな。お前には穂波がいるもんな」
「穂波は関係ねぇだろ。大体、大野はあいつのどこがいいんだよ」
「どこって。それは俺も知りてぇくらいだ」
「…あのなぁ、自分のことだろ?大野ならもっと他に選択肢があるだろ」
空を見上げる大野を見つめ、俺は独り言のように呟いた。
小学生のころ突然、東京に引っ越した俺の親友は清水に帰ってくるなり「俺、まる子のこと好きだから」と宣告されたのを今も覚えている。
大野とは電話越しに幾度か、そんな言葉を交わしたことはあったが改めて言われたときは正直、驚きで言葉がでなかった。
東京には可愛い子が周りにはいただろうし少なからず好意を寄せられていただろう。いや清水にだってお前のこと好きなクラスの女の子を俺は知っている。
(…のに、なんで俺にとって自慢の親友は恋とは無縁のさくらを選んだのか、俺には分からねぇよ。大野)
「写真。大野が東京で暮らしてたときに送ってくれたのがあったろ」
「ああ、運動会のな。すげー昔だろ」
「あのとき大野の隣に写ってた女の子。絶対、お前のこと好きだったぜ」
「…そう言えば清水に引っ越すときに、そんなこと言われたな」
藍色に変化していく空をじっと見つめ、大野の口調はまるで他人事のように淡々としていた。
今だってどれだけの数の女の子がお前に告白して泣いたことか。そんなこと、さくらは知らないぜ?
「あいつ、マイペースで楽天的な性格で怠け者だぞ」
「…けど一緒にいると飽きねぇだろ?」
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