ちびまる子/他短編
□親友の初恋
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「もし、俺がさくらのこと好きだって言ったら大野はどうすんだよ」
「奪うな」
「…躊躇ねぇな。ま、俺はさくらのことそんな対象にはみてないから安心していいぞ」
「ああ、杉山には穂波がいるもんな。俺も穂波はそんな対象じゃないから安心しろよ」
「そうしてくれると助かるぜ…っと、大野?」
信号が赤から青に変わる瞬間、いっそう頬を緩ませた大野に俺は不意に視線を上向かせる。
いきなり走り出した大野に驚いて大野の視線を追うとその先には、さくらがいた。
「まる子!」
「大野君、どうしたのさ。大野君も買い物にきたの?」
「おお、お前は?」
「たまちゃんと遊んだ帰りだよ」
「…もう帰るだけなら家まで送る。ついでにちょっと付き合え」
「ええ!ちょっとあんた杉山君はどうすんのさ」
こちらに背中を向けているので表情は見えないけれど、俺の親友が嬉しそうに笑っているのが分かった。
(さくら、おまえすげーよ。あの大野が女の前でそんな顔すんの、お前だからだぜ?そこんとこ自覚しろよ)
「あー、俺は寄るとこがあるから、さくらは大野と帰れよ。じゃーな大野」
「おう、悪ぃな杉山」
「ちょ!ちょっと杉山くんってば」
まだ後ろで何か声が聞こえるが、まぁ無視だな。邪魔したら俺が大野に怒られるっての。
ちょっと進んだところで振り返ると大野の手が少し乱暴に、さくらの頭を撫でている。けど、すげー嬉しそう。
「親友。お前が恋に落ちる日が来るとは予想外だったぜ」
…けど幸せにな。
end.