ちびまる子/他短編
□ケンタ+まる子
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長谷川ケンタ+まる子
べつに隠すつもりではなかったので白状するとオレは、さくらが好きだった。たぶん、今も好きかもしれない。
小学校を卒業する頃には、はまじも関口もブー太郎もみんながさくらから距離を置くようになった。言うならばオレもそのひとりだ。
嫌いになったわけではなく、たださくらはオレ達とは別の生き物で。やっぱり「女の子」なんだって、そう思うようになってしまったからだ。
(…と言っても距離を置いたって感覚はない。そうしていたつもりでも、やっぱりオレ達が気軽に今も話せる女の子はさくらだけだ)
「長谷川くん、やだね。あんたそれ私の教科書だよ」
「あ、悪い」
「なにさ、ボーとして。また彼女と喧嘩でもしたなら謝りなよ」
「…べつにそういうわけじゃ。さくらこそ大野とは、どうなの?」
「いやだね。あんた、あたしゃ大野君とは関係ないよ」
そう言った、さくらは一体どんな顔をして喋っているのだろうか。じっと目を凝らすと、さくらは嬉しそうな笑顔を浮かべオレを見つめた。
思わずほんの一瞬だけ目を伏せてしまうほど可愛くて。多分、本人は無自覚なんだろうけれど、さくらの魅力はこういうところだ。
(例え、その笑顔が誰かのものになったとしてもオレは多分ずっとさくらが一番、好きなんだ)
「大野が言ってたよ。最近さくらが冷たいって」
「失礼な。私のどこが冷たいのさ」
「さぁ、どこだろうな?オレは、さくらは優しい奴だと思うけど」
「…長谷川くん、あんたは天使だよ」
そんな大袈裟な。とツッコミたくなるような、女にすると少し変な口調なさくらは他の女子と比べると大分、背も小さいし今時、珍しい黒髪だ。
何と言うか、自由な奴かと思えば周りを気にしてばかりいるし人の好意には鈍感なのに痛みには敏感な、難儀な性格だよなぁ。
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