短編2[BL]

□愛することの難しさ
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しんあい/R16



ラブホテルの一室

照明はピンクと赤が入り混じり、その異様な空間に2人は不似合いな制服を床に脱ぎ捨てた。


「……しん様」

「あいちゃん」

携帯は電源を切っているし誰にも邪魔をされない静けさになって、ようやく現実味がじわりと帯びてくる。

あいが、くつ下まで脱ぎ終えるとしんのすけは回転式のベッドに備え付けられた小さな棚から既に準備されていたコンドームを手に取った。


「あいちゃん、ラブホテルは初体験でしょ…いいの?俺なんかで」

「あいは、しん様…がいいんですわ」

「…こんなに震えているのに?黒磯さんにバレたら俺、殺されちゃうぞ」

冗談とも本気とも言えるような言葉を弾ませながら、しんのすけはあいの腰をぐっと強く抱き寄せる。

そうして胸の中に、あいを抱えたままピンク色のベッドにゆっくりと押し倒した。

間近で合う視線の熱は、こんなにも身体を熱くさせるものだろうか?


「…怖い?」

「胸が苦しいですわ。しん様は?」

「俺は怖くないぞ…でも…緊張はしてる…ホラ」

触って?と導かれた、その先はしんのすけの胸元。心臓のあたりだった。

どくりどくりと触れた場所から伝わる激しい音は普段の彼からは想像もできないくらいに慌ただしい。

「ふふ、あいと一緒で安心しましたわ」

「あいちゃんもドキドキしてるぞ」

「ええ。あいも緊張していますのよ」

ベッドの左右に固定された照明だけが、この部屋を照らしている。

けして明るい光ではないが、シーツに背中を預けるあいの身体の上に重なる、しんのすけの表情だけはしっかりと捉えることができた。

途切れ途切れの言葉は、自分でもおかしいぐらい本当に緊張しているんだろう。

「あいも同じですわ…あいのドキドキも、しん様に伝わりますの?」

「聞えるぞ」

あいのふっくらした胸に、しんのすけは耳を寄せ「一緒だぞ」と少し困ったような表情を浮かべて、あいの前髪を優しくかきあげた。

何も身につけていない生まれたままの状態で肌を合わせると、それだけで泣きそうになる。

「やっぱり駄目だぞ。こんなこと、あいちゃんを傷つけるだけだぞ」

「傷なら一生残して下さっても…あいは満足ですわ。しん様」

「そんなこと…できないぞ。こんな、あいちゃんを利用するだけで」

「でしたら利用するなら最後までして。しん様」


優しい、まるで聖女のようなあいの言葉にしんのすけの胸が詰まった。

見つめればそれは軽蔑するでもなく慈しむでもなく、ただの女にみえる

そして、その女の瞳に映るしんのすけも、ただの男に違いなどない、けれど。だからこそ。

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