短編2[BL]

□52406
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しん風しん



52406

自分が男も女も恋愛対象になると分かった時は、我ながら節操の無さに笑ったもんだ。

でも好きになってしまえば仕方がないんだぞ。どうしたって恋に適うわけがないのだから。


「…しんのすけ、いい加減…っやめろ」

「そう言って抵抗しないのは風間くんだぞ?」

握った風間の手を、しんのすけは自分の口元に近づけ喉の奥で笑う。

手の甲から手首に浮かび上がった骨も皮膚も、それからまっすぐ伸びる傷ひとつない腕まで丁寧に舌を這わせた。


「好きだぞ、風間くん。…トオルちゃんは?」

「ママみたいな…呼び方するなよ、お前」

「だって風間君がいつまでたっても答えてくれないからだぞ?」

「…だから」

「だから?」

窓いちまい隔てた外の世界は平和で俺の部屋には風間君の好きな、もえPの主題歌が流れている。

訊き返すと観念したのか、まるで猫みたいに身体をもぞもぞさせて風間君はやっと、口を開いた。


「…52406」

「おお、暗号?」

「違う、そうじゃない。いや…似たようなものか。中国語だ」

「中国語?」

「ああ、発音記号で…まぁ簡単に言えば語呂合わせ…みたいなものか」

中国では記号で愛を語ったりする。ってのは以前、風間君が少しだけしつこいくらい力説していたのを覚えている。

いつまでたっても素直になってくれない彼なりの、あれは愛情表現だったのだろうか。

「それで、どんな意味があるの。風間くん」

「…それは」

「意味が分からなきゃ理解できないでしょ」

「…してる」

「うん?」

「だから、お前を…っ死ぬほど愛してる!って…言ったんだよ」

(わぁ!過激。まさか、そんな言葉が飛び交うなんて予想外だぞ。風間君)

ついつい嬉しくて笑ってしまう俺の腰に背後から風間くんが、きつく抱きついてきた。

それすら幸せで何だか呼吸をするのも勿体ないような…そうでないような

俺たちのしている恋愛に意味なんてないしセックスだって非生産てきで、そこから何も産み出すことはできないけれど。

(…でも、だからこそ…だぞ。ねぇ、風間くん)


「俺も風間くんが死ぬほど…好きなんだぞ」

「…知ってる」

end.

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