短編2[BL]
□Who do you I like?
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しん風しん
カーテンを少しだけ開け窓の外を窺いながら欠伸を噛み締めた。
シングルベッドの片方には今もスヤスヤ夢の中、そして寝癖だらけの頭に向かって「起きろ」と一言だけ声をかける。
Who do you I like?
「んん、風間君?」
「…学校。遅刻するぞ、しんのすけ」
「ん、おお…そうか。俺、昨日…風間君の家にお泊まりしたんだ」
「そうだよ。その寝癖をどうにかするか顔を洗うかしろよ。お前」
「ほっほーい。おはよ、トオルちゃん」
布団の塊は起き上がると表情だけで笑い、その顔に見惚れていた僕の顎を引き寄せると強引に唇を合わせてきた。
すぐに互いの舌と舌がまるで別の生き物のように絡まりあって、もうどちらの唾液か分からない液体を喉の奥に、ごくりと流し込む。
「っ、やめろ」
「嫌だった?」
「…それは、」
(嫌じゃない。ただ、しんのすけのそう言う処が…手慣れていて無性に腹が立つだけなんだ)
僕と付き合う前の、しんのすけの女性関係がどうだったか…詳しくは分からない。今更、知ったところでどうにかなるものでもないが。
「いいから起きろよ。朝食、用意してるから」
「…ん、あれ…風間君のママは?」
「昨日から旅行でいないだろ。まだ寝ぼけてるのか、お前」
「おお、こってり」
「うっかりだろ。僕は先に行ってるからな」
しんのすけはまだベッドの上でグダグダしていたが僕のことを誰よりも尊重してくれることは知っているから二度寝をすることはないだろう。
食卓の上にはホットミルクと、キツネ色に焼けたトースト。それからベーコンエッグに冷蔵庫で冷えたサラダつき。
男の朝食にしては上出来だろう。料理が得意なわけではないが、ママに一通りの知識を教わっていたのが役立った。
(…そう言えばしんのすけの前の彼女は料理が得意な子だった…って、ネネちゃんが言っていたな)
「美味しそうですなぁ…どしたの?風間君」
「…いや、あんまりジロジロ見るなよ。これくらい大したもんじゃない」
「そう?でも風間君が頑張って作ってくれたんでしょ?嬉しいぞ」
「不味くても文句、言うなよ。しんのすけ」
「…言わないぞ」
僕の言葉にしんのすけは変わらず穏やかな視線を僕にだけ向け優しいまま表情だけで微笑んだ。
ワックスで髪を整えたのか酷かった寝癖は消えていたし、朝からそんな笑顔を見せられるとは思わなかったから少し動揺してしまう。
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