短編2[BL]
□hand in hand
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しん風しん
恋が終わるなんて一瞬ですよ。なんてことを見慣れた俳優が談笑交じりに答えるのを見たのは今朝のことだ。
朝から何を語っているのかと、テレビ画面に視線を向けたのは数時間前
そして現在。人通りの多い路上で突然、手を繋いできたしんのすけを振り解き…それが原因で喧嘩になっている最中だ。
「ちょっとくらい平気だぞ、風間君」
「平気なもんか!誰かに見られたら…どうするつもりだったんだよ」
「…俺は気にしない」
「ああ、そうだろうな。でも、お前が平気でも…僕には耐えられない」
もしもこんな場面を見られでもして両親や友人に互いの関係を問い詰められたら、どう答えるつもりだろうか。
(僕達の関係が周知の事実になれば、もう傍にはいられなくなるんだぞ…お前は分かっているのか。しんのすけ)
「…嫌なら帰ってもいいし、このまま俺から逃げてもいいぞ、風間君」
「しんの、すけ」
「ほら、逃げるの得意でしょ?風間君」
嘘や人を騙すような冗談に関しては上手な男ではないと知っているけれど、ここまで辛辣になったしんのすけを見たのは初めてだった。
(お前の無鉄砲な性格に僕は振り回され、そしてお前は僕のすることに傷ついているんだろう)
「…っだけど僕だって、お前のせいで余計な苦労してんだよ」
「ほうほう。じゃ逃げれば?俺は止めも追いかけもしないから」
「…なんだよ、それ」
「はは、プライドが傷ついた?ごめんね。でもどんな言葉も今の風間君には無意味でしょ」
「お前、僕が好きなんじゃないのか」
「…好きだぞ。大好きだぞ?でもどれだけ愛しても風間君、信用してくれたことないでしょ」
「そんなこと…っ違う。ただ…僕は…お前を」
それから何も言葉がでなかった。今度は互いに長い沈黙が続いて足元に視線を落とした。
墨を水で薄く溶かしたような灰暗い雲は急激に色褪せていく。
もしも僕としんのすけがこんな関係ではなく、ただの友人あるいは親友だったのならこんな他愛無い喧嘩などしなかったのかもしれない。
(事実この気持ちを永遠に封印し友人でいようと頑張ってきた頃のほうが、お前も僕も今よりは幸せだったような気もする)
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