短編2[BL]
□郷剛太郎
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アクション仮面(郷)+しん
キミに「嫌い」だと、言われて泣いた。
(正確にいえば夢の中の、しんのすけ君にだが)
それでも、その言葉の意味には、もう結婚しても子供がいても可笑しくないような大人の男が泣くほどの威力があった。
英雄が
「…あのときは死んでもいいと思ったよ」
「俺が郷さんを嫌うことなんて永遠にないぞ」
「そうかな?」
「…そうだぞ」
「そうだね。今、こうしてキミは私の目の前にいるんだから」
閉じていた瞼を開けて見上げると、しんのすけ君はソファに座る私の膝の上に跨ると額と額をくっつけて笑った。
何歳も年下で正義のアクション仮面が好きで5歳の頃からずっと懐いてくれる。可愛い子供。
(…なんて当時は、本当にそれだけしか思っていなかったのに)
いつから、こんなにも特別な意味で好きになってしまったのだろうか。
「ふふ、アクション仮面は、泣かないんじゃなかったの?郷さん」
「…そうだったね」
だからこそキミに嫌われて(英雄と言う名の)大人がひとり泣いたんだ。
だけどそれは本当に悲しくて泣いたと言うよりも、どこか安心して嬉しくて泣いてしまったと伝えるべきかもしれない。
キミに嫌われて安心する私が存在したことに…目覚めの涙は不快だったけれど事実、その感覚に近かったのだ。
(キミに好かれたい、愛されたい。…でもキミに嫌われたい)
「アクション仮面が始まる時間だぞ、郷さん」
「…嬉しそうだね。しんのすけ君」
「郷さんは自分の番組なのに嬉しくないの?」
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