短編2[BL]
□時川ショウ
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時川ショウ+しん
例えばの話し
オレはお前と出会わなければ一生、恋をしなかっただろう。
Im crazy about you.
灰色の雲で覆われた空は昼間だというのにどこか寂しさを漂わせるような
あるいは懐かしいような空気が病的なものを感じさせていた。
「しんのすけ」
学校に向かう途中。柔らかな声に振り返ると、そこには見知らぬ少年がひとり立っている。
しんのすけよりも背の高い、あまりにも整ったその容貌と男らしい端正な顔。低い声。
きりっとした眉といい、すっきりした鼻筋、引き結ばれた少しだけ薄い、けれど形のいい唇。
容姿も完璧ならば内面から溢れるワイルドな雰囲気は、しんのすけの周りにはいないタイプだった
「しんのすけ、オレだ。覚えてるか?」
「…おお!ご近所に最近、お引っ越してきた田中さんのお友達」
「そうそう田中の友達で。じゃなくて!…マジで忘れたのか」
「こってり」
「それを言うなら、うっかりだ…くそ」
気づけと言う方が無理なのかもしれない。昔、ショウが父親の仕事の都合で一週間だけ世話になった幼稚園で出会ったくらいの縁だ。
長年の幼馴染でもなければ、再会を約束した友でもない。
だが、ショウは苛立ったように折角、整っていた髪をかき乱して眉を寄せると不意にしんのすけが顔を近づけてくる。
お陰で、しんのすけの身につけている香水の匂いがショウに、これが夢ではなく現実であることを思い出させていた。
覚悟を決めたように開いた口をゆっくりと動かすと、こみ上げてくる愛しさで胸が押し潰されそうになる。
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