短編2[BL]
□潜む愛
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バレンタイン/しんネネ
「ネネちゃん、オラ。ななこおねいさんが好きなんだぞ」
バレンタイン前日
あれは、まだしんちゃんもネネも恋愛に関してなんの知識もないような小学生で。
どうせ防衛隊のみんなは女の子からチョコをもらったりしないのだろうと気合をいれて頑張ったネネの手作りチョコは、そんなしんちゃんの一言で差し出せなくなってしまった。
マサオくんのもボーちゃんのも風間くんのも、パパにもあげるチョコは何時間もかけて作ったけれど、その中でもしんちゃんのは誰よりも特別だったのに。
(それでも、あの頃。まだ悪いことも良いことも判別できないようなネネが渡せなかったのは、しんちゃんの所為なのよ)
もしも、ネネの気持ちが詰まったような哀れなチョコを渡してしまったら育ててきた愛情までもが腐ってしまうような気がしたからだ。
「おはよう、ネネちゃん。今日も寒いね」
「おはよう、マサオ君。しんちゃん達とは一緒じゃないの?」
いつも一緒ってわけじゃないよってマサオ君は言うけれどネネはいつも一緒だから聞いてるのよ、と笑みを湛えながら下駄箱に手をかけた。
校門前に立って挨拶を指導する先生や、朝練でグラウンドを走る陸上部に他愛も無い会話を繰り返すネネ達。
教室に向かう途中、マサオ君はいつも通り、ネネの後ろをただ歩くだけ。隣にはあまり並んだことが無い。
「そう言えば、ネネちゃん。もうすぐしたらバレンタインだね」
「…そうね、マサオくんは誰かから貰う予定でもあるの?」
「はは、ボクにくれる人なんていないよ。いたら嬉しいけどね」
(嘘吐きなマサオ君。おにぎりのくせに去年は女の子からのチョコを断ってたじゃない)
でも、本命以外はいらないってマサオ君の姿勢には少し尊敬する。しんちゃんもそうだったら良かったのに。
「あ、ボーちゃん。おはよう、今日は早いんだね。日直だった?」
「…おはよ、う。たまたま、朝…目が覚めて、はやく着いた、から」
教室の扉をひらくと、ぎっしり並んだ机に一人
一番、後ろの席の窓際で日光浴をしている幼馴染にネネとマサオは自分の席に荷物を置くとその場所に集まった。
「なんだか三人で話すのって久しぶりね」
「そ、う。しんちゃんは…今日も寝坊、かも」
「はは、授業が始まる前にメールしておくけど、起きるかな?」
「マサオ君のメールで起きないならネネは知らないわ。自業自得よ」
ああ、まだ外は寒いのにこの窓際の席だけは天国だわ。暖かくて、つい深く眠ってしまいそうになるくらい居心地がいいのだから。
ふぁぁあ、と溜息のような欠伸と一緒に、しんちゃんにメールを打つマサオくんと雲を眺めているボーちゃんを交互に見やるとネネは「ねぇ」と声をかけた。
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