短編2[BL]
□初夏の病
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しん+ひま
赤いリボンに青いスカート。愛嬌のある大きな瞳。誰もが羨ましがるだろう長い睫毛に傷一つない綺麗な白い肌。
中学生独自の幼さを残しつつも「美少女」としか表現しえない、ひまわりの姿は通り過ぎる人を振り向かせていた。
自分の容姿がそれなりに可愛いということを自覚しているひまわりにとってそれはいつもの光景にしか過ぎない。
「ただいまぁ」
と玄関のドアを開けると男物のスニーカーと女物のミュールなんかが雑多に脱ぎ捨てられていた。
(…また、だ)
「おかえりなさい!ひまわりちゃんでしょ?うわ、噂通り可愛いねぇ」
「…ありがとうございます。しんのすけの、お友達ですか?」
悪態をつきかけた時、数人の女の人に出迎えられてしまった。派手な髪型に厚い化粧。それでも、ひまわりは愛想よく笑顔を零す。
「そうよ。私達、野原の友達!お邪魔します」
「ごゆっくり」
さりげなく彼女たちを遠巻きに自宅に上がると居間にはやはり他にも数人、顔を揃えていた。
1人はテレビの前にもう1人はしんのすけの隣に座っている。知っている顔と知らない顔が半々だ。
綺麗な女の子もいれば、お洒落な男の子もいる。しんのすけと同じ制服を着ているところをみると皆、同級生なのだろう。
「ねぇ、ひまわりちゃんも一緒に遊ぼうよ」
「ごめんなさい。今から友達と約束があるから」
約束なんて嘘。だって、しんのすけの隣に座る綺麗な女の子も知らない男の子も好きにはなれない。
できるだけ申し訳なさそうに階段を上がると、しんのすけが「ひま」といつもより優しく声をかけるものだから振り返ってしまった。
「…なに」
「ひま怒ってるでしょ?友達、家に連れてくるの嫌だった?」
「…風間君やネネちゃん達ならいいわ。でも他の人は…苦手」
「どして?」
「どうしても」
理由なんてない。ただ、しんのすけが大人になるたびに友達が変わったり増えたりするのが嫌だったのだ。
こうして周りの女の子みんなに嫉妬するのも置いていかれたような寂しさも我慢できない。
でも何度も繰り返す、この感情は永遠のループだ。どんなに、ひまが可愛くなっても、しんのすけは振り向いてはくれないんだろう。
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