短編2[BL]
□背徳の蜃気楼
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相互記念/瑛様へ!
デパートの最上階
最近、完成された観覧車をオレ達は眺めていた。
背徳の蜃気楼
「やっぱり、まだ人が多いな。帰ろうぜ、しんのすけ…寒いだろ」
「いやだぞ」
「あのなぁ、大体、男2人で並ぶのも乗るのも恥ずかしいだろが」
オレの言葉に、
しんのすけは口元をぎゅっと噛み締め「でも」と言いかけた。
別にオレだって乗りたくないわけじゃないんだ。
ただ、並ぶ大半が恋人同士であることが何とも気後れしてしまう。
「…違うぜ?別にオレはお前と乗りたくないわけじゃないんだよ」
「河村くん」
オレの視線の先には腕を絡め手を繋ぐ恋人同士の群れが映った。
オレとしんのすけだって、愛し合っている。つまりは恋人同士だ。
(だけど、同性を好きになるということはこういうことなのだなと)
乗ることの無い大きな観覧車を見るたびにそう思ってきたのだ。
「…俺は周りからどんな目で見られても平気だぞ。気にしない」
「しんのすけ」
「俺と付き合ってることに後悔してる?嬉しいのは俺だけだった?」
「…違う!けどな」
「違わないでしょ」
泣きそうな、しんのすけの顔。違う、好きなんだ。嘘じゃないんだ。
けれどそれは上手く言葉にもなってはくれない。
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