短編2[BL]
□知るは罪
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よよ+しん
三年前、ボクの犯した罪は愛で塗れている。
「野原君この漫画面白かったよ。ありがとう」
「おお、もう全部読んだの?まだ良かったのに」
野原君は長いマフラーを両手で優しく包みこみ漫画を鞄に戻した。
学校帰り、こうして君と歩くのはボクにとって幸福と少しの願望を呼び覚ます。
「ん、面白かったから寝るのも忘れて読んだよ」
「代々木君らしい」
そう言って、君は長い睫毛を揺らしボクの隣を歩く。距離は近い。
だけど、この間隔は友人としての茶番劇。ボク達を囲む触れてはいけないテリトリー。
「代々木君、もうすぐしたら剣道の試合だったでしょ。俺、応援に行こうかな」
「野原君が、応援に来てくれたら勝てそうだよ」
「…うそ、最初から負ける気なんてないくせに」
そう声を漏らす君の横顔にボクは表情だけで微笑んだ。君に吐く嘘なんてボクにはひとつもないのに。
「本当だよ、野原君に応援に来てもらいたいな」
「行くに決まってるでしょ、代々木くん。だって俺達、友達だもん」
「…そうだね」
赤信号、君は止ってボクはそれでも一歩前に足を進めた。喉が痛い。胸が苦しい。
けれど君の声は優しいままで、思わず逸らした視線を野原君へ戻す。
「…苦しいな、」
「何か言った?」
「何でもないよ」
三年前ボクは部活帰りの野原君に触れるだけのキスをしたことがある。まだボクも君も中学生で、そして、それはすぐに互いの秘密になった。
君は何も聞かなかったしボクも何も言わなかった。結果それが「忘れたフリ」の友人ゴッコとして今も継続されている。
だから、ボクは「好きだ」と君に告げることを、もうずっと言葉にできないでいた。
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