短編[BL]

□17歳の夜
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ボーしん



17歳、最後の夜

ボク達は現実を走る電車の中で終わらない物語を探しに旅立った。


「しんちゃん、その靴いつも履いてたやつだね」

「ボーちゃんだって、その靴…お気に入りだって言ってた奴だね」


ふわり、甘い香り。そして優しい笑顔。ボクは泣きたくなる気持ちを心の中で噛み砕く。


「此処で…毎日、みんなと遊んだ記憶があるぞ」

「…うん」

そうだね。此処は皆で遊んだ土手の川。その場所にボクとしんちゃん2人分の靴をそろえた。

しんちゃんもボクもお気に入りの靴。川の流れはとてもはやい。間違って川に飛び込めば死んでしまうだろう。

けれどボク達は今日、此処で死んだのだ。靴はその生贄となる。


「…しんちゃん、そろそろ最終電車の時間だよ」

「おお、じゃぁそろそろ行きますかボーちゃん」

飛び込み禁止、そう書かれていた古い看板を横目にボクは歩き出す。

しんちゃんの持っている荷物を半分持って、しんちゃんの手を握る。

「…ボーちゃん、なんで夜って悲しい気持ちになるんだとおもう?」

「孤独、だと思うから…ボクはいつもそうだったよ、しんちゃん」

孤独、不安、将来、未来、希望、全部、あの夜は知っている気がした。

見透かされている気分になって、ようやく怖いと実感するのだ。


「しんちゃん寒い?手が震えてる…手袋あるよ」

「ん、…寒くないぞ」

寒くないけれど怖い。しんちゃんは小さな声で切符のボタンを押した。

ガシャン、最終電車。行き先は知らない土地。


「…帰る?」

「かえらないぞ」

17歳の夜。この決断は間違いだったのか。それとも正解だったのか。

誰もいないホームのベンチ。大きな荷物を抱え手を握りあっていた。


「しんちゃんは…この世界に生まれたボク達を不幸だと思う?」

男同士。それも幼馴染。とうぜん、周りの人は認めてはくれなかった。

(もし、ボクか君どちらかが女の子だったら良かったのだろうか)

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