短編[BL]
□アネモネの恋
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亜樹様キリリク/よよしん
君は優しいから
きっと、ボクが好きだと言っても笑って許してくれるのだろう。
アネモネの恋
「代々木君って望まれているから手に入らないもの何てないでしょ」
それはいつかの夢
誰に言われたんだったか、もう覚えてはいない。
(神様じゃないんだ。ボクにだって手に入らないものくらいある)
けれど、ボクはそれは違うと否定することも出来ないでいたのだ。
「代々木くん!」
「野原くん、おはよう。朝から元気だね君は」
「代々木くんは顔色が悪いぞ、さては悪い女に引っ掛りましたな」
違うよ、悪夢だよ。そうボクが言えば野原くんは少し驚いて笑った。
その横顔を見るだけでこんなにも胸が苦しいなんて。これは恋だ。
けれど、叶わない恋ならしたくない。君にだけは嫌われたくない。
「代々木くん、悪い夢をみたときは手を握るといいと思うぞ。ホラ」
「…、え」
「俺の手、温かいでしょ?幸せ半分、代々木君にわけてあげる」
無邪気な笑顔。毒だ。ボクは君にだけはいつも勝てないでいた。
剣道も恋も何もかも。ボクは君にだけは敵わない。一方通行だ。
苦しいのに君もボクも男なのに、どうして心なんてあるんだろうか。
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